「社名を変更したいけど何をすればいいのかな・・・?」
「社名変更の費用はいくらなんだろう・・・?」
こんにちは!税理士の井上です。
会社の「顔」である「社名(商号)」の変更は、単に名前を変える手続きではありません。法的な手続き、行政機関への届出、取引先への通知、会計処理まで、多くのタスクを計画的に進める必要があります。一つでも手続きを忘れると、法的なペナルティや事業上の思わぬトラブルにつながることも・・・!
この記事では、社名変更の全手順を分かりやすく解説します。税理士の専門的な視点から、手続きの順番、期限、注意点、費用や会計処理まで、経営者や実務担当者が知りたい情報をこの記事一本にまとめました。
最後までお読みいただければ、社名変更の全体像がわかり、抜け漏れなくスムーズに手続きを終えるための「ロードマップ」としてご活用いただけます。
社名変更を決断する前に知っておくべき3つの基礎知識
社名変更は、手続きを始める前の「準備段階」がとても重要です。
なぜ社名を変更するのか、その目的をはっきりさせ、新しい社名が法律上のルールに合っているかチェックすることが、この後の手続きをスムーズに進めるための第一歩です。
なぜ社名変更が必要か?よくある理由とブランドへの影響
社名変更は、会社の大きな転換点で行われる、経営上の大切な判断です。
その背景には、さまざまな経営上の理由があり、以下のようなケースが挙げられます。

事業内容の変化・多角化: 始めた頃の事業から大きく変わり、今の社名が実際の業務内容と合わなくなった場合。新しい事業内容をしっかり表す社名に変更し、お客様や市場での認知度を高めるために行う。
- ブランドイメージの刷新: 古いイメージをなくし、より現代的で新しい企業イメージを作りたい場合。
- M&A(合併・買収)やグループ再編: グループ会社としての一体感を出すため、または新しい経営体制を社内や社外に示すために行う。
- 事業承継: 創業者の個人名を使った社名から、より一般的で長く続く社名へ変更し、次の世代へ引き継ぐことをはっきりさせるケース。
社名変更は、単に名前が変わるだけではありません。名刺やウェブサイト、製品パッケージなど、お客様の目に触れるすべてのものが新しくなります。
これは、会社の考え方や将来像(ビジョン)を見つめ直し、社内や社外に伝える良いチャンスです。計画的に行うことで、会社の価値を大きく高める効果が期待できます。
新しい社名のルールと注意点|失敗しないための「商号調査」
新しい社名は、自由に決められるわけではありません。会社法やほかの法律で決められたルールを守る必要があります。
特に大切なのが、他社の権利を侵害しないための「商号調査」です。

1. 使用できる文字のルール
社名(商号)に使える文字は、法務省によって決められています。
- 漢字、ひらがな、カタカナ
- ローマ字(大文字・小文字)
- アラビヤ数字(0, 1, 2, 3…)
- 一部の記号(「&」「’」「,」「-」「.」「・」)。 ただし、これらの記号は言葉を区切るために使う場合に限り、社名の先頭や末尾には使えません(ピリオド「.」は例外で、末尾に使えます)。
2. 商号調査の重要性
新しい社名を決めたら、登記申請の前に必ず「商号調査」を行う必要があります。この調査をしないと、登記が認められないだけでなく、後から法律に基づき社名の使用を止められたり、損害賠償を請求されたりするリスクがあります。
調べるポイントは、主に次の3つです。
- 同じ住所・同じ社名の禁止: 法律上、同じ住所に同じ社名(商号)の会社は登録できません。
- 似た社名の確認: 法律のルールはゆるくなりましたが、有名な会社と間違えやすい社名や、同じ市区町村で同業他社と似た社名を使うと、お客様の勘違いを招き、トラブルの原因になります。
- 商標登録・ドメインの確認: 新しい社名が他社によって商標登録されていないか、また、希望するホームページのアドレス(ドメイン)が取得できるかも同時に確認しましょう。これは将来のブランド戦略のために非常に大切です。
商号調査は、法務局の窓口やオンラインの「登記情報提供サービス」で確認できます。リスクをきちんと避けるためには、これらを組み合わせて調べることが大切です。
株式会社と合同会社で異なる「意思決定」のプロセス
社名を変更する手続きは、会社の種類によって法律で決められたルールが異なります。株式会社と合同会社、それぞれの正しい手続きを理解しておくことが大切です。

- 株式会社の場合・・・「株主総会の特別決議」が必要:株式会社では、社名(商号)は会社の基本的なルールである「定款」に、必ず記載しなければならない項目です。この定款を変更するには、株主総会での「特別決議」が必要です。特別決議は、会社のとても大切なことを決めるための、いつもより厳しい条件での決議方法です。
- 合同会社の場合・・・「総社員の同意」が原則:合同会社(LLC)の場合は、原則として「社員全員の同意」で定款を変更し、社名を変更します。株主総会のような会議を開く必要はありませんが、社員全員から同意を得たことを証明する「総社員の同意書」を作る必要があります。ただし、定款に「(例)業務を行う社員の半数以上が賛成すれば変更できる」といった特別なルールがある場合は、そのルールに従います。
【STEP1】法務局への変更登記|社名変更の最重要手続き
社内で変更が決まったら、次に行うのは法務局への「商号変更登記(社名変更の登記)」です。これは社名変更で最も大切で、法律上の効力を持つ手続きであり、ほかのすべての手続きのスタート地点になります。期限も厳しく決まっており、遅れると重いペナルティが課されるため、細心の注意が必要です。
定款変更のための株主総会(特別決議)と議事録作成
株式会社が社名変更をするには、まず株主総会を開き、定款変更の「特別決議」を行う必要があります。この決議の内容を、法的にきちんと記録した「株主総会議事録」が、登記申請で必ず必要になる書類です。
会社法第309条が定める「特別決議」の要件とは
特別決議が成立するための条件は、会社法第309条第2項で厳しく決められています。
- 最低限必要な出席者数: 議決権を持った株主のうち、その「議決権の過半数(半分より多い数)」を持つ株主が出席すること。
- 賛成に必要な数(決議要件): 出席した株主の、その議決権の「3分の2以上」の賛成があること。
例えば、議決権のある株式が100株の会社なら、まず51株以上(過半数)の議決権を持つ株主が出席しなければなりません。その上で、出席した株主の議決権のうち3分の2以上(例:60株の出席なら40株以上)が賛成することで、初めて特別決議が成立します。
この条件を満たさない決議は無効になってしまうため、事前に「誰がどれだけ議決権を持っているか」を正確に把握しておくことが、とても大切です。
議事録に必ず記載すべき項目と保管義務
特別決議の内容は、株主総会議事録として正確に記録する必要があります。
この議事録は、登記申請の際に法務局へ提出する、法律上の大切な証明書類です。
【議事録に記載する主な項目】
- 株主総会を開いた日時と場所
- 会議の進み方(主な流れ)と、その結果
- 出席した取締役や監査役などの名前
- 議長(司会進行役)の名前
- 議事録を作った人の名前
- 決まったこと(議案)(例:「第1号議案 定款一部変更の件」)
- 変更する定款の条文(どこがどう変わったか分かるもの)
- 議決権を持つ株主の人数、その議決権の総数、出席した株主の人数、その議決権の数
- 賛成、反対、棄権した議決権の数
作った議事録は、法律(会社法)にもとづき、会社の本店に10年間、保管しておく義務があります。もし保管をしないと、100万円以下のペナルティ(過料)が課されることもあるため、きちんと管理してください。
変更登記申請の期限は2週間!必要書類と登録免許税
株主総会で定款変更を決めた日(効力発生日)の翌日から「2週間以内」に、本店所在地を管轄する法務局へ変更登記を申請しなければなりません。この期限は法律で決められた絶対のルールで、1日でも過ぎるとペナルティの対象となります。
登記申請に必要な全書類リストと入手方法
社名変更の登記に必要な書類は、次の通りです。申請書のひな形(様式)は、法務局のホームページからダウンロードできます。
- 株式会社変更登記申請書:社名を変更する旨を記載したもの。
- 株主総会議事録: 定款の変更を決めたときのもの。
- 株主リスト: 議決権を多く持つ株主(上位10名、または議決権の合計が3分の2になるまでの株主)を記載したもの。
- 印鑑(改印)届書: 社名変更にあわせて、会社の実印(法人実印)を変更する場合に必要です。
- 委任状: 司法書士など、ほかの人に申請をお願いする場合。
登記申請には、手数料として「登録免許税」が30,000円必要です。この税金は、申請書に収入印紙を貼って納めます。
登記を怠るとどうなる?会社法第976条のペナルティ(過料)
正当な理由なく2週間の申請期限を過ぎてしまうことを「登記懈怠(とうきけたい)」と呼びます。登記を怠った状態になると、法律(会社法第976条)にもとづき、代表者個人に対して100万円以下のペナルティ(過料)が課される可能性があります。
この過料は、法律上のペナルティ(行政罰)であり前科にはなりませんが、会社の経費(損金)として処理することはできず、代表者が自腹で支払うことになります。金額は裁判所の判断によりますが、怠った期間が長くなるほど高額になる傾向があります。「少しぐらい大丈夫だろう」という甘い考えは禁物です。
法人実印の変更(改印)手続きも同時に進めるのが効率的
社名変更にあわせて、会社の実印(法人実印)を変更することは、法律上の義務ではありません。しかし、古い社名のハンコを使い続けると取引先を混乱させるため、ほとんどの会社が新しい社名でハンコを作り直し、法務局に届け出る「改印」手続きを行います。
この改印手続きは、社名変更の登記申請と同時に行うのが一番スムーズです。必要な書類は以下の通りです。
- 印鑑(改印)届書
- 代表者個人の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
- 印鑑カード交付申請書(新しい印鑑カードが必要な場合)
新しい会社の実印は、銀行口座の名義変更など、その後の手続きで必ず必要になります。登記申請の準備と同時に、新しいハンコ作りも進めておきましょう。
ここで税理士として特に強調したいのは、「手続きのドミノ倒し」という視点です。
法務局での登記申請の期限は2週間ですが、登記が完了し、新しい「会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)」が取れるまでには、申請から1〜2週間かかります。 一方で、この後説明する年金事務所への届出期限は変更日からわずか5日、ハローワークなどは10日です。これらの届出には、新しい「会社の登記簿謄本」の提出が必要になることが多く、手続きを順番に進めていては、まず間に合いません。
うまく進めるコツは「同時並行での準備」です。法務局へ登記申請を出すと同時に、税務署や社会保険関係の届出書類もすべて準備しておくのです。そして、登記完了の連絡を受けたら、すぐに「会社の登記簿謄本」を取りに行き、間髪入れずに各役所へ提出する。
この段取りが、ペナルティを避け、スムーズにすべての手続きを終わらせるためのベストな方法と言えます。
【STEP2】行政機関への届出も忘れずに!
法務局での登記申請が終わったら(または申請中なら)、次は、税務・社会保険・労働保険を担当する各役所への届出です。こちらにもそれぞれ期限が決められており、一つでも忘れると、役所からのお知らせが届かなくなるなど、事業運営に影響が出ます。
税務署・都道府県・市区町村への「異動届出書」の提出
法務局で登記しただけでは、税務署や自治体は社名が変わったことを知りません。税金に関する大切なお知らせをきちんと受け取るため、以下の3箇所に「異動届出書(変更の届出)」を提出する必要があります。

- 税務署(国税):納税地を管轄する税務署に提出します。提出期限は「異動後遅滞なく」とされており、明確な日数はありませんが、登記完了後速やかに行うのが基本です 。
- 都道府県税事務所(法人事業税・法人住民税):本店所在地を管轄する都道府県税事務所に提出します。
- 市区町村役場(法人住民税):本店所在地を管轄する市区町村役場に提出します。東京都23区内のみ提出不要です。
都道府県と市区町村の提出期限は、自治体によって違うため、事前にホームページなどで確認が必要です。一緒に提出する書類として、新しい社名が書かれた「会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)」や定款のコピーを求められるのが一般的です。
これらの手続きは、国税の電子申告システム「e-Tax」や地方税の「eLTAX」を利用して、インターネットで行うこともできます。
税務調査に関するご相談は、こちらの記事も参考にしてください。
内部リンク:https://homare.tax/blog/when-a-tax-auditcomes
年金事務所への届出|期限は「5日以内」の最優先タスク
健康保険と厚生年金保険を担当する日本年金機構(年金事務所)には、社名が変わった日(効力発生日)から5日以内に「健康保険・厚生年金保険 適用事業所名称/所在地変更(訂正)届」を提出する必要があります。
この「5日」という期限は、すべての手続きの中で最も短いものです。一緒に提出する書類として「会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)」のコピーが必要になるため、登記申請と同時に準備を進めることが不可欠です。
労働基準監督署・ハローワークへの届出|「順番」が重要
労災保険と雇用保険についても、それぞれ変更の届出が必要です。ここには、見落としがちな「手続きの順番」があります。
1. 労働基準監督署(労災保険)へ先に提出:まず、担当の労働基準監督署へ、社名が変わった日の翌日から10日以内に「労働保険 名称、所在地等変更届」を提出します。
2. 「1」の後にハローワーク(雇用保険)へ提出:次に、担当のハローワーク(公共職業安定所)へ、社名が変わった日の翌日から10日以内に「雇用保険事業主事業所各種変更届」を提出します。
この手続きの順番において大切なのは、ハローワークへ届出を出すときに、先に労働基準監督署で提出した変更届の「控え(受付印のあるもの)」のコピーも一緒に提出する必要がある点です。そのため、必ず「労働基準監督署 → ハローワーク」の順番で手続きをしないと、二度手間になってしまいます。
行政機関への届出一覧(提出先・書類・期限)
| 提出先 | 提出書類 | 提出期限 | 主な添付書類 | 根拠/備考 |
| 法務局 | 株式会社変更登記申請書 | 効力発生日から2週間以内 | 株主総会議事録、株主リスト等 | 登記懈怠は代表者個人に過料の可能性あり(会社法第976条) |
| 税務署 | 異動届出書 | 異動後、遅滞なく | 原則不要(登記事項証明書の提示を求められる場合あり) | 国税に関する手続き |
| 都道府県税事務所 | 法人異動届 | 自治体による(要確認) | 登記事項証明書のコピー、定款のコピー等 | 法人事業税・法人住民税に関する手続き |
| 市区町村 | 法人異動届 | 自治体による(要確認) | 登記事項証明書のコピー、定款のコピー等 | 法人住民税に関する手続き |
| 年金事務所 | 適用事業所名称/所在地変更(訂正)届 | 効力発生日から5日以内 | 登記事項証明書のコピー | 健康保険・厚生年金保険。全手続き中、最も期限が短い。 |
| 労働基準監督署 | 労働保険 名称、所在地等変更届 | 効力発生日の翌日から10日以内 | 登記事項証明書のコピー等 | 労災保険。必ずハローワークより先に手続きを行うこと。 |
| ハローワーク | 雇用保険 事業主事業所各種変更届 | 効力発生日の翌日から10日以内 | 労働保険名称、所在地等変更届の事業主控コピー | 雇用保険。労基署の手続き完了が前提。 |
【STEP3】事業運営に関わる実務的な変更手続き
法律上の手続きや役所への届出が終わったら、次は、日々の仕事に関わる、大切な変更作業に移ります。これらは法律上のペナルティは直接ありませんが、取引先との信頼関係や、日々の仕事の効率に大きく影響するため、素早く丁寧な対応が必要です。
金融機関での法人口座名義変更|必要書類と注意点
法務局での登記が終わり、新しい「会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)」が取れたら、すぐに、取引のあるすべての銀行などで法人口座の名義変更手続きを行います。この手続きをしていないと、振込名義が合わずに入金が遅れたり、融資を受けるときに問題が起きたりする可能性があります。
手続きは銀行の支店窓口で行うのが一般的です。ただ、事前に予約が必要だったり、インターネットで一部手続きできたりする場合もあります。銀行などによって必要な書類が少し違うこともあるため、行く前に必ず電話で確認しましょう。
【一般的に必要となる書類】
- 会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)(発行後3ヶ月または6ヶ月以内の原本)
- 新しい会社の実印(法人実印)
- 会社の実印の印鑑証明書
- 銀行印(古いものと新しいものの両方)
- すべての通帳・証書・キャッシュカード
- 窓口に行く人の本人確認書類(運転免許証など)と、会社にいることが分かる書類(名刺など)
登記が終わってから口座の名義変更が終わるまでには、さらに1〜2週間かかることを見込んで、スケジュールに余裕を持たせましょう。
取引先への通知と挨拶状の送付|信頼を維持するマナー
社名変更は、自社だけでなく取引先にも影響がある、大切な情報です。請求書の宛名や振込先の名義など、お金のやり取り(経理)に直接関係するため、素早く丁寧なお知らせが必ず必要です。

取引先への通知のタイミングは、社名が変わる日(効力発生日)の1ヶ月前が一般的です。こうすることで、取引先が社内システムの情報変更などを余裕をもって行うことができます。
大切なお取引先には、メールやホームページでのお知らせだけでなく、改めて手紙(挨拶状)を送るのが、ビジネスマナーとして丁寧です。挨拶状には、古い社名、新しい社名、変更する日に加えて、社名変更の理由(経緯)やこれからの意気込みなどを簡単に書き添えることで、より良い印象を与え、信頼関係を保つことができます。
契約書の再締結は必要か?税理士が法務的観点から解説
『古い社名で結んだ契約書は、すべて新しい社名で作り直さなければならないのか?』というのは、多くの担当者が持つ疑問です。

結論から言うと、法的には契約書の再締結は不要です 。契約の主体は社名(商号)ではなく、会社そのもの(法人格)です。社名が変わっても法人格は同じであるため、旧社名で締結した契約の効力はそのまま継続します。
しかし、法的な観点とは別に、実務的な観点からは注意が必要です。取引先によっては、社内ルールで契約書の再締結を求めてくる場合があります。また、将来的なトラブルを避けるため、あるいは取引関係を再確認する良い機会として、社名変更を証明する「覚書(おぼえがき)」を双方で取り交わしておくことが賢明です。覚書には、元の契約書は引き続き有効であること、そして契約当事者の名称が変更されたことを明記します 。
ただし、契約書の中に「商号変更時には再契約を行う」といった特約条項が含まれている場合は、その定めに従う必要があります 。
印鑑・名刺・Webサイトなど|社名変更に伴うタスクリスト
社名変更は、目に見える会社の様々なものを作り変える作業が必要です。タスク漏れがないよう、チェックリストを作って管理するのがおすすめです。
<図解指示>社名変更に伴うタスクを「社内向け」「社外向け」「物品」の3つのカテゴリに分類したチェックリスト形式の図解を挿入。</図解指示>
- ハンコ類: 会社の実印(法人実印)、銀行印、角印(会社の認印)、ゴム印など
- 印刷物: 名刺、封筒、レターヘッド、請求書・領収書などの書類(帳票類)、会社案内パンフレット
- インターネット関連: ホームページの社名・ロゴ、ドメイン、メールアドレス、SNSアカウント名
- 契約関係: 事務所の賃貸契約、リース契約、電話・インターネット回線、電気・ガス・水道などの公共料金
- その他: 会社や事務所の看板、社用車の名義、各種保険(火災保険、自動車保険など)の契約者(会社)の名前etc…
これらの変更作業は、新しい社名に変わる日(効力発生日)に合わせて一斉に切り替えができるよう、前もって準備を進めておくことが大切です。
【業種別】忘れてはいけない許認可(ライセンス)の変更手続き
役所から許可(許認可・ライセンス)をもらって特定の事業を行っている場合、社名が変わったら、その許可についても変更手続きが別に必要です。この手続きを忘れると、ペナルティ(過料)だけでなく、最悪の場合は営業停止や許可取り消しといった、重い処分を受ける可能性があります。自分の会社に必要な手続きを、必ず前もって確認してください。
建設業・宅建業・飲食店など|主要な業種の手続き期限
建設業や宅地建物取引業は、社名変更の後の手続きが法律で厳しく決められています。

建設業許可:社名が変わった日から30日以内に、許可を受けた役所(都道府県知事または国土交通大臣)へ「変更届出書」を提出する必要があります。この届出を忘れると、公共工事の入札に参加するための経営事項審査が受けられなくなるなど、仕事に直接的な影響が出ます。
- 宅地建物取引業免許:こちらも社名が変わった日から30日以内に、免許を受けた役所へ「宅地建物取引業者名簿登載事項変更届出書」を提出します。さらに、宅建業免許証そのものに新しい社名を書いてもらうための「免許証書換交付申請」も同時に行う必要があります。
法人成り(個人事業主から会社設立)をお考えで、許認可の引き継ぎに関心のある方は、こちらの記事も参考にしてください。
内部リンク:https://homare.tax/blog/still-a-sole-proprietor
飲食店・古物商|営業許可の変更届
飲食店といった日常生活に身近な業種でも、許可の変更手続きは必ず必要です。
- 飲食店営業許可:担当の保健所に対して「営業許可申請事項変更届」を提出します。提出期限は自治体によって違うことがあるため、前もって確認が必要です。
- 古物商許可:手続きが少し複雑なため注意が必要です。会社の社名変更だけなら、変更日から14日以内(会社の登記簿謄本が必要な場合は20日以内)の「事後の届出」です。しかし、社名変更と同時にお店の名前も変更する場合には、変更予定日の3日前までの「事前の届出」が必要となります。さらに、許可証に書いてある内容が変わるため「書換申請」も必要です。どの手続きが必要か、前もって担当の警察署(防犯係)に相談するのが一番確実です。
人材派遣業|事業許可の変更届
労働者派遣事業の許可を得ている場合も、労働局への届出が必要です。

「労働者派遣事業変更届出書」を担当の労働局に提出します。提出期限は、変更内容によって変わります。
- 登記に関係ない変更(例:派遣元責任者の交代): 変更があった日の翌日から10日以内
- 登記に関係する変更(例:社名、住所、役員の変更): 変更があった日から30日以内
社名変更は「登記に関係する変更」なので、期限は30日以内です。
許認可手続きを怠った場合のリスク
許可(許認可)の変更届を忘れた場合のリスクは、単に登記を怠った場合のペナルティ(過料)とは比べものになりません。許可は、その会社が特定の仕事(事業)をルール通り行うための「資格」そのものです。届出を忘れることはつまり、その資格を持つための前提が崩れた、と見なされることになりかねません。
最悪の場合、仕事(事業)を続けられなくなる事態になることもあります。役所からの指導や始末書の提出だけでは済まず、営業停止命令や、最終的には許可自体が取り消される可能性もゼロではありません。
社名変更を決めた段階で、自分の会社が持っているすべての許可をリストアップし、それぞれの担当の役所に「変更手続きが必要かどうか」と「進め方(手順)」を確認する作業を、真っ先に計画へ組み込むべきです。
社名変更にかかる費用と会計処理(勘定科目)
社名変更には、法務局に納める税金から専門家への報酬、各種備品の作成費用まで、様々な費用がかかります。ここでは、合計でどれくらいの費用を見ておくべきか、そしてそれらの費用を会計(経理)でどう処理すべきかを、税理士の視点から具体的に解説します。
「自分でやる」vs「専門家に依頼」の費用相場を比較
社名変更の登記手続きは、自分で行うことも、司法書士に依頼することもできます。それぞれにかかる費用を、比べてみましょう。
社名変更にかかる費用の目安(DIY vs 専門家依頼)
(2025年6月時点)
| 項目 | 自分で手続きする場合 | 司法書士に依頼する場合 | 備考 |
| 登録免許税 | 30,000円 | 30,000円 | 法務局に納める必須の税金 |
| 司法書士報酬 | 0円 | 20,000円 ~ 40,000円 | 事務所により異なる |
| 登記事項証明書取得費 | 1通 490円~600円 | 報酬に含まれる場合が多い | 手続き後に数通必要 |
| その他実費 | 郵送費、交通費など | 郵送費、交通費など | |
| 合計(目安) | 約31,000円~ | 約51,000円~71,000円 |
自分で手続きを行えば、費用を司法書士に払うお金の分だけ安くできます。しかし、書類を作る手間や法務局へ行く時間、そして何より「書類のまちがいによる申請の遅れ」というリスクを考える必要があります。
一方、司法書士にお願いすれば、数万円のお金はかかりますが、ややこしい書類作りから申請までを正しく、すばやく進めてもらえます。特に、ほかの手続き(役員変更や目的変更など)も同時に行う場合や、本業が忙しく時間がない場合には、専門家にお願いするメリットは大きいと言えるでしょう。
会社設立時の費用について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
内部リンク:https://homare.tax/blog/company-formation-costs
登録免許税から印鑑作成まで|費用の仕訳例
社名変更にかかった費用は、もちろん会社の経費として計上できます。その際の会計処理(仕訳)で用いる勘定科目は、費用の内容によって異なります。
- 登録免許税:法務局に納める30,000円の登録免許税は、「租税公課(そぜいこうか)」という経理上の項目(勘定科目)で処理するのが一般的です。 (仕訳例) (借方) 租税公課 30,000 / (貸方) 現金預金 30,000
- 司法書士への報酬:司法書士に支払う手数料は、「支払報酬料」という項目として処理します。 (仕訳例) (借方) 支払報酬料 33,000 / (貸方) 現金預金 33,000
※依頼した司法書士が法人の場合は、上記の仕訳で問題ありませんが、個人の場合は、士業の報酬源泉に関する仕訳が必要です。
- 「会社の登記簿謄本」などの取得費用:「会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)」や印鑑証明書を取るための手数料は、「租税公課」または「支払手数料」で処理します。
- 印鑑・名刺・封筒などの作成費用:新しいハンコや名刺、封筒などの作成費用は、その内容によって「消耗品費」や「事務用品費」、広告宣伝用のパンフレットなどは「広告宣伝費」として処理します。
まとめとよくある質問(Q&A)
最後に、社名変更を検討している経営者や担当者からよく寄せられる質問について、Q&A形式でお答えします。
Q:助成金や補助金を受給中に社名変更しても大丈夫?
A:はい、大丈夫です。ただし、必ず届出が必要です。
社名を変更したからといって、助成金などをもらう権利がなくなることは、基本的にありません。しかし、助成金や補助金を出している役所(経済産業省、厚生労働省、自治体など)には、「社名が変わりました」と届け出る必要があります。
ふつうは「登録事項変更届」のような決まった書類(様式)があり、新しい「会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)」を一緒に提出します。この届出を忘れると、お金の振込みが止まったり、最悪の場合、「支給します」という決定が取り消されたりする可能性もあるため、法務局での登記が終わったら、すぐに手続きを行いましょう。
Q:手続き全体にかかる期間の目安は?
A:(社名を)決めてから、すべての手続きが終わり、仕事が完全に新しい社名に移るまでには、およそ1ヶ月半〜2ヶ月を見ておくと良いでしょう。
- 準備期間(約2週間〜1ヶ月): 新しい社名(商号)の決定、商号調査、株主総会を開く準備・開催。
- 法務局への登記手続き(約1〜2週間): 申請してから登記が終わるまで。
- 役所や銀行などへの届出(約1〜2週間): 登記が終わった後、いろいろな場所への届出を同時に進める。
- 実際の仕事での切り替え作業: 取引先へのお知らせ、ホームページや印刷物の変更など。
特に法務局が忙しい時期(年末年始や年度末など)は、登記が終わるまでの期間がいつもより長くなることがあるため、スケジュールに余裕を持たせることが大切です。
Q:どのタイミングで社名変更を行うのがベスト?
A:法律上の決まりはありませんが、税金や経理(会計)のことを考えると「事業年度の開始日」に合わせるのが一番スムーズでおすすめです。
決算期の途中で社名を変更すると、一つの決算期の中に古い社名の取引と新しい社名の取引がまざってしまい、経理の帳簿管理がややこしくなります。「期のはじめ(事業年度の開始日)」に変更日を合わせることで、経理の処理がシンプルになり、決算書も分かりやすくなります。
また、「期のはじめ(事業年度の開始日)」は事業計画を見直すタイミングでもあるため、社名変更という新しいスタートを社内や社外にアピールする上でも良いタイミングです。
社名変更は、会社の新しいスタートです。しかし、その裏には、ここまで見てきたように複雑でたくさんの手続きが必要です。一つひとつの手続きを、抜け漏れなく計画的に進めることが、成功のポイントです。
もし、手続きの多さに不安を感じたり、本業の仕事に集中しながら、これら全部を管理するのが難しいと感じたりした場合は、専門家であるほまれ税理士法人にご相談ください。私たちは、単なる税金の専門家ではなく、会社の法律・人事・お金のことを幅広く理解し、経営者の皆様が安心して本業に取り組める環境を整えるパートナーです。
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