【税理士監修】一人社長のための旅費規程|雛形・相場・税務調査対策まで完全ガイド

こんにちは!税理士の井上です。

「一人だけの会社だから、旅費規程なんて作っても意味がないのでは?」

 「少しでも手元に現金を残せたら…」

「一人社長が出張手当(日当)をもらうと、税務署に否認されるリスクが高いと聞いた…」

このようなお悩みをお持ちの一人社長は、決して少なくありません。

実は、一人社長でも旅費規程を正しく使えば、合法的に手取りを増やしつつ節税もできるんです。ただし、規程の作り方や使い方が間違っていると、税務調査で指摘されるリスクもあります。

そこで今回は、一人社長のための旅費規程について、メリットから雛形、税務調査対策まで、分かりやすく解説します!

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目次

そもそも旅費規程とは?一人社長でも作成できる根拠

まずは旅費規程がどんなものなのか、そして一人社長でもなぜ導入が認められるのか、その理由をお伝えしましょう。

旅費規程の基本

旅費規程とは、役員や従業員が仕事で出張する際に、交通費や宿泊費、日当といった「出張手当」の支給基準を定めた社内ルールです。

このルールをあらかじめ作っておくことで、出張のたびに社長の気分で金額を決めるのではなく、規程に基づいていつも同じ基準で経費を計算できます。
これにより、経費の処理が公平になり内容がはっきりするのです。

旅費規程で支給される出張手当は、主に以下の3つで構成されます。

  • 交通費
    目的地までの往復にかかる電車代や飛行機代など
  • 宿泊費
    出張中の宿泊にかかる費用
  • 日当(出張手当)
    出張中の食事代やちょっとした雑費などに充てるための手当

この中でも特に大切なのが「日当」です。
後ほど詳しくお話ししますが、日当をうまく活用することが節税の大きなポイントとなります。

一人社長でも導入できる法的根拠

「従業員がいない一人社長の会社でも、本当にルールは有効なの?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。結論から言うと、「有効」です。

税法上、旅費規程の適用対象は「役員・従業員」とされており、社長も会社から見れば「役員」という一人の従業員です。したがって、社長一人の会社であっても、その社長自身に適用するルールとして、法律上全く問題なく作ることができるのです。

大切なのは「社長個人のため」ではなく、「会社の仕事で出張する役員(=社長)のため」という形をきちんと整えることです。この考え方が、税務署に正当性を認めてもらう上での重要な前提となります。

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一人社長が旅費規程を導入する3つの絶大なメリット

旅費規程を導入することで、具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか。
ここでは、税金に大きな影響を与える3つのメリットを解説します。

メリット①:社長個人の所得税・住民税が非課税になる

一番のメリットは、ルールに基づいて支払われる日当が社長個人の所得税や住民税の課税対象にならないことです。

これは、所得税法で「仕事に必要な費用として認められるもの」は、税金がかからない(非課税)と定められているためです。例えば、給与を月5万円増やすと、その5万円には所得税や住民税、社会保険料がかかります。しかし、同じ5万円を「出張5回分の日当(1回1万円)」として受け取った場合、この5万円は全額非課税となりそのまま手取り額が増えるのです。

脚注:所得税法では、仕事のための出張で支払われるお金のうち、通常必要と認められるものは非課税と決められています。日当は、この「通常必要」な実費を補うものとして扱われます。

メリット②:法人の節税(法人税・消費税)につながる

社長個人だけでなく、会社側にも大きな節税メリットがあります。

法人税の節税

旅費規程に基づいて支払った日当や宿泊費は、会社の経費(旅費交通費)として全額計算できます。経費が増えれば、その分だけ会社の利益が減り、結果的に法人税の負担を軽くすることにつながります。

もし、給与(役員報酬)として支払うと、所得税を引く義務が発生します。しかし、旅費として支払えば、税金を引く必要のない経費となるため、会社のお金の流れ(キャッシュフロー)にとっても有利です。

消費税の節税

国内出張の日当や宿泊費は、消費税の課税仕入れとして扱われ、仕入税額控除の対象となります(2025年8月時点)。

例えば、日当1万円を支払った場合、消費税10%が含まれているとみなされ、10,000円 × 10/110 ≒ 909円の消費税を払ったものとして、会社が納める消費税額から差し引くことができます。出張の回数が多ければ、この効果は決して無視できません。

メリット③:社会保険料の負担を軽減できる

見落とされがちですが、社会保険料の負担を減らせることも非常に大きなメリットです。

社会保険料(健康保険・厚生年金)は、給与(役員報酬)の金額を基準に決まります。もし、将来的に役員報酬の一部を税金のかからない日当に置き換えることができれば、給与の基準額が下がり、社長個人と会社の両方が負担する社会保険料を減らせる可能性があります。

これは、将来の事業計画や役員報酬を見直す際に、強力な選択肢となり得ます。役員報酬の最適な決め方についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

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【雛形あり】旅費規程の作り方 5ステップ

それでは、実際に旅費規程を作る手順を5つのステップで解説します。
特に金額の設定は税務調査でも重要視されるポイントなので、慎重に考えましょう。

ステップ1:規程の必須項目を決定する

まず、旅費規程に必ず盛り込むべき項目を整理します。
最低限、以下の項目は必ず記載してください。

  1. 目的
    規程を作る目的(例:会社の命令による出張旅費の基準を定める)
  2. 適用範囲
    誰に適用されるか(例:すべての役員と従業員)
  3. 出張の定義
    どのような移動を「出張」とするか(例:会社から片道100km以上の場所への移動)
  4. 旅費の種類
    支給する旅費の内訳(交通費、宿泊費、日当など)
  5. 旅費の金額
    役職ごとの具体的な日当・宿泊費の上限額
  6. 旅費の申請・精算手続き
    申請の方法、精算の期限、必要な書類(出張旅費精算書など)
  7. 規程の施行日
    いつからこの規程を有効にするか
  8. 改定履歴
    規程を変えた場合に記録する欄

ステップ2:日当・宿泊費の「妥当な金額」を設定する

ここが最も重要なポイントです!
日当や宿泊費の金額は、社会の常識に照らして客観的に見て「妥当な範囲内」で設定する必要があります。あまりに高すぎると、その超過分が「隠れた給与」と見なされ会社の経費として認められないリスクが高まります。

税理士の視点から、金額が妥当かどうかを判断する際には、以下の3つの基準を総合的に考えてみることをおすすめします。

  1. 全員が納得できるバランスか
    一人社長の場合、比べる人はいませんが、「将来、従業員を雇った場合でも使える公平な基準か?」という視点で考えることが大切です。
  2. 同じ業種・同じ規模の他の会社と比べてどうか
    公的なデータなどを参考にすることで、金額の正当性を主張しやすくなります。

参考基準①:国家公務員の旅費

客観的な基準として最も信頼できるのが、「国家公務員等の旅費に関する法律」です。法律で定められた基準なので、税務署に対して有力な根拠となります。

  • 日当:内閣総理大臣で3,800円、事務次官などで3,600円
  • 宿泊費(1泊あたり):内閣総理大臣で19,100円、事務次官などで18,000円(地域によって変わります)

 引用元:e-Gov法令検索「国家公務員等の旅費に関する法律」
(2025年8月時点の概要)

公務員の基準は民間企業に比べて低めですが、この金額を大きく超えなければ、「社会の常識から外れている」と指摘されるリスクは非常に低いと言えるでしょう。

参考基準②:民間企業の平均データ

もう一つの参考になるのが、民間企業の調査データです。例えば、産労総合研究所の調査(2023年度)によると、国内出張における日当の平均支給額は以下のようになっています。

  • 部長クラス:2,900円
  • 一般社員:2,100円 

引用元:産労総合研究所「2023年度 国内・海外出張旅費に関する調査」

これらの公的・民間のデータを参考に、一人社長(役員)の場合、国内出張の日当は10,000円〜15,000円、宿泊費は15,000円〜20,000円程度を上限として設定するケースが実務上は多いです。ただし、会社の規模や利益状況に応じて、無理のない範囲で設定することが大切です。

ステップ3:旅費規程のひな形(サンプル)

先ほどの項目と金額をもとに、実際に旅費規程を作ってみましょう。
以下にシンプルな雛形を用意しましたので、皆さんの会社の状況に合わせて自由に書き換えてみてください。

旅費規程(サンプル)

  • 第1条(目的)
    この規程は、株式会社〇〇(以下「会社」)の役員や従業員が、会社の仕事で出張する際の旅費の支給について定めるものです。
  • 第2条(適用範囲)
    この規程は、会社のすべての役員と従業員に適用されます。
  • 第3条(出張の定義)
    この規程における出張とは、普段の勤務地を起点とし、目的地までの距離が片道100km以上の場所へ移動し、業務を行うことをいいます。
  • 第4条(旅費の種類)
    会社が支給する旅費は、交通費、宿泊費、日当とします。
  • 第5条(旅費の支給基準)
    旅費の支給基準は、以下の通りとします。交通費
    一番安くて合理的な経路の実費を全額支給します。ただし、社長が仕事上の必要性を認めた場合に限り、新幹線のグリーン料金や飛行機のビジネスクラス料金の利用を認めます。宿泊費(1泊あたり上限)代表取締役:18,000円従業員:12,000円日当(1日あたり)代表取締役:12,000円従業員:8,000円                       
    ※日当は、宿泊を伴う場合は出発日から帰宅日まで、日帰りの出張の場合は1日分を支給します。
  • 第6条(申請と精算) 出張する人は、事前に決まった書式で出張申請をしなければなりません。出張が終わったら、すみやか(原則として5営業日以内)に「出張旅費精算書」に領収書などの必要な書類を添えて提出し、精算を受けるものとします。
  • 附則 この規程は、2025年10月1日から有効とします。

【重要】 この雛形はあくまでも、旅費規程の「たたき台」です。 これを参考に、最終的には公的な雛形や専門家である税理士の意見も踏まえて、皆さんの会社の状況に合った正式な旅費規程を作成してください。

ステップ4:株主総会で承認を得る(議事録の作成)

旅費規程は、社長の給与に関わる大切なルールです。そのため、会社の正式な会議である「株主総会(または取締役会)」で承認を得る手続きがおすすめです。

たとえ社長一人だけの会社でも、株主総会を開き、その証拠として議事録を必ず作って保管しておきましょう。この議事録が、旅費規程が正しく作られたことを証明する、とても重要な書類となります。

ステップ5:関連書類を整備する

旅費規程ができたら、実際に運用するための書類を準備します。

  • 出張旅費精算書
    誰が、いつ、どこへ、何のために出張し、いくらかかったかを記録する書類です。規程に沿った日当や宿泊費、そして領収書がある交通費などを記載します。
  • 出張報告書
    出張の目的や内容、成果などをまとめた報告書です。これがあれば、出張が本当に仕事に必要なものだったことを客観的に証明できます。

これらの書類をしっかり準備し、出張のたびにきちんと記録を残すことが、税務調査から会社を守る一番の対策となります。

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税務調査で否認されないための運用上の重要注意点4選

規程を完璧に作っても、運用がずさんでは意味がありません。
ここでは、一人社長が特に注意すべき、実際に運用する上でのポイントを4つに絞って解説します。

注意点①:「社長だけ」を対象にしない

規程を「社長だけ」に適用するのは避けましょう。これは、社長への給与(役員報酬)とみなされるリスクを高めます。

必ず「すべての役員と従業員」を対象とし、将来的に従業員が入社した場合でも同じルールが使える公平な規程であることを明示しておきましょう。

注意点②:出張の事実を証明できる客観的証拠を残す

税務調査では、「その出張は本当に仕事で行われたのか?」という点が厳しくチェックされます。以下の客観的な証拠をセットで保管する習慣をつけましょう。

  • 出張旅費精算書、出張報告書
  • 新幹線や飛行機のチケット、ホテルの領収書や利用明細
  • 出張先とのメールのやり取りや、会議の議事録
  • 参加したセミナーや展示会のパンフレット

これらの証拠が、出張が事実であったことを裏付けます。

注意点③:架空出張やプライベート旅行への適用は絶対にしない

言うまでもありませんが、実際には行っていない出張(架空出張)や、プライベートな旅行に旅費を支給することは、脱税行為です。

税務調査で発覚した場合は、重加算税などが課されるだけでなく、会社の信用を大きく損なうことになります。規程の悪用は絶対にやめましょう。

注意点④:規程と実態を一致させる

「規程では日当1万円と決めているが、今回は特別に3万円支払う」といった、規程を無視した運用は認められません。必ず規程で決められた金額や手続きに沿って、支払いと精算を行ってください。

規程の内容と実際の運用が違っていると、規程そのものの有効性が疑われる可能性があります。

会社の経費管理について、より体系的に学びたい方は、こちらの記事もご一読ください。

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一人社長の旅費規程に関するよくある質問(Q&A)

最後に、お客様からよく寄せられる質問にお答えします。

Q1. 海外出張の場合の日当はどうすればよいですか?

A1.  海外出張の場合、時差や現地の物価、治安などを考慮し、国内出張よりも高く日当を設定するのが一般的です。

目安として、国内日当の1.5倍~2倍程度で設定するケースが多いです。例えば、北米・ヨーロッパ地域なら20,000円~30,000円、アジア地域なら15,000円~25,000円といった形です。これも、他の民間企業データなどを参考に、誰もが納得できる妥当な範囲で設定しましょう。

Q2. 規程を作成すれば、交通費や宿泊費の領収書は不要になりますか?

A2.  いいえ、原則として必要です。

日当は決まった金額を支給するため領収書は不要ですが、交通費や宿泊費を実際に使った金額で精算する場合は、その金額を証明するために領収書が必須です。

ただし、宿泊費を「1泊18,000円」のように定額で支給すると規程で決めた場合は、その金額の範囲内であれば領収書は不要となります。しかし、税務上の安全性を考えると、実際に使った金額で精算することを基本とし、証拠となる領収書は必ず保管しておくことを強くおすすめします。

Q3. マイカーで出張した場合のガソリン代はどう扱いますか?

A3.  マイカー(プライベートの車)を仕事で使用した場合は、旅費規程の中に「車両手当」や「ガソリン代支給基準」といった項目を設けて対応します。

一般的には、「走行距離(km)× 1kmあたりの単価(例:15円~20円)」で計算した金額を支給する方法が取られます。この場合も、移動の事実を証明するために、訪問先や走行距離を記録した精算書の作成が必要です。

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まとめ:旅費規程を正しく作り、適切に運用すれば一人社長も賢く節税できる!

この記事で解説した通り、旅費規程は一人社長にとって非常に有効な節税・手取りを増やす方法です。

【本記事の重要ポイント】

  • 一人社長でも、社長自身を対象とする規程として合法的に作成できます。
  • 日当は、社長個人の所得税・住民税が非課税になり、会社の経費(損金)にもなります。
  • 金額は、公務員や民間企業のデータを参考に、社会の常識に照らして妥当な範囲で設定しましょう。
  • 税務調査で認められるためには、議事録や出張報告書などの証拠を残し、ルールに沿って正しく運用することが不可欠です。

旅費規程の導入は、一度ルールを整えれば継続的に効果が期待できる、費用対効果の高い方法です。しかし、その効果を最大限に引き出し、税務上のリスクを避けるためには、専門家の視点からの検討が欠かせません。

もし、皆さんの会社に最適な規程の作成や運用方法、役員報酬全体の見直しについて不安な点があれば、ぜひ一度、私たちほまれ税理士法人にご相談ください。あなたの会社の状況に合わせた、最善の節税プランをご提案します。

会社設立を検討中の方や、設立したばかりで何から手をつければいいか分からない方も、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

税理士/近畿税理士会所属/税理士登録年2005年/登録番号102807/会計システムの開発エンジニアとしてキャリアをスタート。その後、大阪市内の税理士法人での勤務を経て2005年に税理士として登録し、個人事務所を開業。法人化などを経て、現在はほまれ税理士法人の代表を務める。 「後世に誇れる仕事をする」を理念に、これまで2,000社以上の顧問先を支援。企業のライフステージに合わせた総合的なコンサルティングを提供している。

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