こんにちは!税理士の井上です。
会社を立ち上げて「さあ、これから頑張るぞ!」と意気込んでも、最初の関門である法人口座の開設でつまずく方は少なくありません。銀行に断られてしまうと落ち込みますが、実はその多くは、あなたの会社の計画に問題があるのではなく、銀行のルールに沿った審査によるものです。
この記事では、たくさんの新しい会社のサポートをしてきた税理士の私が、法人口座の審査がどういう仕組みになっているのかを、詳しくお話しします。どうして審査が厳しいのか、その理由から、口座開設がうまくいかない7つの原因をわかりやすく解説します。
さらに、それぞれの銀行のいいところを比べて、あなたの会社にぴったりの銀行の選び方、そして審査に通りやすくなるための4つのステップまで、しっかりとお伝えします。
この記事を最後まで読んでいただければ、法人口座開設に対する不安が解消され、安心して手続きを進めていただけるかと思います。
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銀行が確認する5つのポイント
口座開設の際、銀行は法律で定められた5つの項目を必ず確認します。これを「取引時確認」と呼び、私たちが申し込んだときに一つひとつチェックしているのです。
- 会社名と会社の住所
会社の正式な名前と住所が、申込書と会社の登記簿(履歴事項全部証明書)に書かれている内容と一致しているかを確認します。 - 口座を開設する目的
「事業で得たお金をこの口座で受け取り、そこから取引先への支払いや、従業員のお給料を払う」といった、具体的なお金の使い道を示すことが大切です。 - 事業内容
どんな事業をする会社なのか、「定款」や公的な書類で確認されます。もし、事業内容がはっきりしなかったり、「本当にこの事業をやるのかな?」と銀行に思われたりすると、審査に通りにくくなってしまいます。 - 実質的支配者(会社の持ち主)
会社を実質的に動かしているのは誰なのかを確認します。これは、口座が他人の名前で不正に利用されないようにするための、非常に大切なチェック項目です。 - 経済制裁対象国や地域との取引・資産の有無
国際的なルールにのっとり、テロ資金やマネーロンダリングなどの不正なお金を防ぐため、経済制裁対象国(注1)や地域との取引、または関連する資産がないかを確認します。
銀行の審査は、会社の将来性を評価するものではなく、法律で定められた項目をきちんとクリアしているかを確認するための手続きです。 口座開設を成功させるには、「うちの会社はこんなに素晴らしいんです!」と熱心にアピールするより、「銀行の担当者が、迷うことなく『OK』と言えるような、分かりやすくてバッチリな書類を揃えること」が一番の近道です。
(注1)経済制裁対象国とは、テロ活動や人権侵害など、国際社会の秩序を乱す行為に対して、国際連合や主要な国が経済的な制裁措置(取引制限など)を課している国や地域を指します。
なぜ審査に落ちるのか?法人口座を作れない7つの致命的な原因
「法律で厳しいのは分かったけど、具体的に何が原因で審査に落ちるの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
ここでは、新しい会社が法人口座を開設する際によくある、7つの失敗パターンを一つひとつ分かりやすく解説します。
審査に落ちてしまう原因は、多くの場合「この会社は、きちんと事業を行っている信頼できる会社だ」という印象を、銀行に与えられていないことにあります。
原因1:事業が本当に存在するのか、はっきりしない
銀行が一番警戒するのは、登記だけされていて実際の事業活動がない「ペーパーカンパニー」です。どれだけ立派な事業計画があっても、実際に会社が動いている客観的な証拠がなければ、審査はなかなか通りません。
事業の存在を証明する3つのポイント
- 会社のホームページがない
今の時代ホームページは会社の顔です。会社概要や事業内容、代表者の情報などをきちんと載せて、誰が見ても「しっかりした会社だ」と思えるようなホームページを用意しましょう。無料ブログや、情報が少ない簡単なサイトだと、不十分だと判断されることがあります。 - 固定電話の番号がない
携帯電話だけでも仕事はできますが、多くの銀行、特に店舗を持つ銀行では、固定電話があることで、より信頼できる会社だと判断されやすくなります。 - 事業活動を示す資料がない
設立したばかりでまだ売上がなくても、事業が始まっていることを証明できます。例えば、取引先との契約書や、サービス内容が分かるパンフレットなど、会社が実際に動いていると分かる資料を揃えておきましょう。
原因2:事業内容が曖昧すぎる、または多すぎる
会社設立時に作成する定款に記載する「事業目的」は、銀行に「どんな事業をする会社なのか」を伝えるための、大切な情報です。
- 具体的に書かれていない
「コンサルティング業」といった抽象的な書き方ではなく、「中小企業向けの経営コンサルティング業」のように、誰が見ても事業内容が具体的にイメージできる言葉で記載しましょう。 - あれもこれもと書きすぎている
将来のために、あれこれとたくさんの事業目的を書いておきたくなる気持ちはよく分かります。でも、関係のないものを何十個も並べてしまうと、「結局、この会社は何をするの?」と銀行に不信感を与えてしまうことも。一番やりたい事業を最初に書いて、関連するものをいくつか追加するくらい(10〜15項目程度)に絞るのがおすすめです。 - 必要な許認可や資格を取得する
業種によっては、公的な許認可証(建設業、古物商等)が必要な場合があります。事業目的の1番目に記載する場合は、必ず取得しましょう。
原因3:資本金が少なすぎる
今は資本金1円から会社を作れるようになりました。しかし、法律上は問題なくても銀行の信用を得られるかは別の話です。資本金が極端に少ないと、審査で不利になることがあります。
・信用される資本金の目安
銀行からの信用を得るには、事業内容にもよりますが、最低でも100万円程度の資本金を用意することが一つの目安です。ちなみに、設立時の資本金の全国平均は約300万円と言われています。
・税理士が教える節税のコツ
資本金を1,000万円未満に設定すると、設立から最大2年間、消費税の納税が免除される大きなメリットがあります。銀行に信頼してもらえる額(100万円〜300万円)にしつつ、税金面でも得ができる1,000万円未満に設定するのが、一番賢いやり方です。
原因4:本店所在地がバーチャルオフィス
家賃を抑えたり、便利な場所の住所を使えたりするバーチャルオフィスは魅力的です。ただ、法人口座を作る時には、少し注意が必要です。
銀行がバーチャルオフィスに慎重になる理由
バーチャルオフィスが過去に金融犯罪で使われたことがあり、銀行は警戒心を持っています。しかし、バーチャルオフィスだからといって、絶対に口座が作れないわけではありません。特にネット銀行は、比較的柔軟に対応してくれることが多いです。
なぜバーチャルオフィスを利用しているのか、その理由をはっきりと伝えることが重要です。例えば、「社員が自宅で仕事をしているので、オフィスは不要と判断しました」といった、説得力のある説明ができるようにしておきましょう。
また、利用者への審査をしっかり行っている、信頼と実績のあるバーチャルオフィスを選ぶことも大切です。
原因5:提出書類に不備や間違いがある
これは意外と見落としがちですが、審査に落ちる一番の原因かもしれません。
たとえば、申込書の住所と登記簿の住所が違っていたり、証明書の有効期限が切れていたり。こんな小さなミスでも、銀行の担当者から「この会社、大丈夫かな?」と思われてしまいます。
書類を出す前には、間違いがないか、必要なものが全部揃っているかを、念入りにチェックすることが大切です。
関連記事:【税理士が徹底解説】会社設立の必要書類ガイド|登記から税務手続きまで |ほまれ税理士法人
原因6:代表者の経歴や信用情報に問題がある
会社を設立したばかりの時は、会社自体の信用はまだありません。そのため、銀行は社長であるあなたの経歴や、過去の信用情報を重視します。過去に自己破産や債務整理の経験があったり、ローンの支払いを滞納した履歴があったりすると、審査に影響する可能性があります。
原因7:銀行選びのミスマッチ
どれだけ完璧に準備をしても、申し込む銀行を間違えていては、口座開設は難しくなります。
銀行によって審査の通りやすさが違います
一般的に、新しい会社が口座を作りやすいのは、以下の順番だと言われています。
- ネット銀行(比較的作りやすい)信用金庫地方銀行メガバンク(最も難しい)
実績のない会社がいきなりメガバンクに申し込むのは、かなりハードルが高いです。まずはあなたの会社の状況を考えて、一番審査が通りやすい銀行から申し込むのが、口座開設への一番の近道です。
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どの銀行を選ぶべきか?新設法人向け金融機関の徹底比較
法人口座の開設を成功させるには、自社の状況に合った銀行を戦略的に選ぶことが大切です。ここでは、新しい会社におすすめの銀行を3つのタイプに分けて、それぞれの特徴を比較します。
| 金融機関の種類 | 新設法人の審査難易度 | 開設スピード | 特徴・手数料 | バーチャルオフィスとの相性 | おすすめの法人 |
| ネット銀行 | 低い | 最短即日〜数日 | ・手数料が安い ・オンラインで手続き完結 ・スタートアップ向けサービスが豊富 | 非常に良い | ・設立直後の法人 ・IT・Web関連事業 ・コストを最優先したい法人 |
| 地方銀行 信用金庫 | 中程度 | 2〜4週間 | ・地域密着型 ・担当者との関係構築が可能 ・将来的な融資相談がしやすい | ケースバイケース(要相談) | ・地域に根ざした事業を行う法人 ・将来の融資を視野に入れている法人 |
| メガバンク | 非常に高い | 1ヶ月以上 | ・社会的信用力が抜群 ・全国、海外に拠点 ・大規模取引に対応 | 厳しい | ・設立から1〜2年以上経過し、事業実績がある法人 ・将来的に海外展開や大規模な資金調達を目指す法人 |
スタートアップの第一選択肢「ネット銀行」
新しく会社を始めるなら、ネット銀行が最も現実的な選択肢です。従来の銀行とは違い、スタートアップのニーズに合わせた柔軟なサービスを提供しています。
◆圧倒的なメリット
最大の魅力は、審査の柔軟さとスピード。来店不要で手続きがオンラインで完結し、手数料も安く設定されています。バーチャルオフィスや少ない資本金に対しても審査が厳しくなく、まさに現代のスタートアップのためにある金融機関と言えます。
◆代表的なネット銀行
- GMOあおぞらネット銀行: 最短即日での口座開設が可能。振込手数料も安く、新しい会社にとって心強い味方です。
- 住信SBIネット銀行: アプリで本人確認が完結し、最短翌営業日から利用できます。資本金やオフィス形態の審査も柔軟です。
- 楽天銀行: 楽天サービスとの連携が強み。ただし、他のネット銀行に比べて提出書類が多めの傾向があります。
関連記事:【税理士が解説】ネット銀行に「通帳」はない!代替できる公式書類とは? |ほまれ税理士法人
地域密着で攻める「地方銀行・信用金庫」
地域のつながりを大切にしたい場合は、地方銀行や信用金庫が有力な選択肢です。
・地域貢献という視点
これらの銀行は、地域を元気にするために地元の新しい会社を積極的に応援してくれます。あなたの会社がどうやって地域に役立つかを伝えると、審査で良い印象を与えられるでしょう。
・対面での関係構築
担当者と直接顔を合わせて相談できるのが大きなメリットです。将来的に事業が拡大し、融資が必要になった際にもスムーズに話を進められる可能性があります。
信頼性は抜群だが最難関「メガバンク」
三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行といったメガバンクの口座を持つことは、会社の信頼度をぐっと上げることができます。しかし、設立したばかりの会社にとっては、非常にハードルが高いのが現状です。
・高いハードル
メガバンクは、すでに実績のある大企業を主な顧客としているため、実績のない新設法人への審査はとても慎重です。一般的には、少なくとも1〜2年分の決算書を提出できる段階になってから検討するのが現実的です。
・時間的コスト
口座開設までに1ヶ月以上かかることも珍しくなく、急いでいる場合には向いていません。
最適な銀行選びの戦略
あなたの会社の成長に合わせて、銀行を賢く使い分けるのがおすすめです。
- 事業開始時: スピードとコストを最優先し、審査が通りやすいネット銀行で口座を開設。
- 事業が安定してきたら: 地域での信用や対面でのサービスが必要になったら、地方銀行や信用金庫で2つ目の口座を開設。
- さらに事業を拡大する時: 全国展開や大規模な資金調達を視野に入れる段階で、メガバンクに挑戦。
このように銀行を選ぶことで、審査に落ちるリスクを減らし、会社の成長をスムーズにサポートできます。
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審査通過への完全ガイド:口座開設を成功させる4ステップ
ここまでの内容をふまえて、法人口座をスムーズに開設するための具体的な行動計画を4つのステップでご紹介します。この完全ガイドにそって準備を進めれば、審査に通る確率がぐっと上がります。
ステップ1:申請に必要なものを完璧に用意する
審査は提出された書類のみで行われます。そのため、完璧で不備のない書類を揃えることが、何より大切になります。以下のチェックリストを参考に、しっかりと準備しておきましょう。
関連記事:法人設立届出書とは?会社を作った後の重要手続きを税理士が解説 |ほまれ税理士法人

ステップ2:事業内容と口座開設目的を説明できるようにしておく
書類だけでなく、口頭での説明を求められることもあります。特に、窓口がある銀行では担当者との面談があると思っておきましょう。
- 事業内容をシンプルに説明
「誰に、何を、どのように提供して、どうやって利益を出すのか」を1〜2分で簡潔に話せるようにしておきましょう。難しい専門用語は避けて、誰にでも分かるように伝えることが大切です。 - 口座開設の目的を明確に
「なぜこの口座が必要ですか?」と聞かれたら、「お客様からの売上を受け取ったり、取引先への支払いや給料の振込に使ったりするためです」といったように、事業に必要な理由を具体的に答えられるようにしておきましょう。
ステップ3:複数の銀行に同時に申し込む
どれだけ準備を完璧にしても、審査に落ちる可能性はゼロではありません。一つの銀行の結果を待っているだけだと、大切な時間を無駄にしてしまいます。
- リスクを分散し、時間を有効活用
最もおすすめなのは、複数の銀行に同時に申し込むことです。もしも、一つの銀行で審査に落ちてしまっても他の銀行の審査結果を待つことで、スムーズに事業をスタートできます。 - おすすめの組み合わせ
「審査が通りやすいネット銀行」と「将来の融資も視野に入れた地方銀行または信用金庫」に同時に申し込むのがおすすめです。こうすれば、すぐに使える口座を手に入れながら、将来のことも考えて銀行と良い関係を築けます。
ステップ4:審査結果を分析して次に活かす
申し込んだ後は、審査結果を待ちます。審査期間は銀行によってかなり差があります。
- 冷静に自己分析
もしも審査に落ちてしまっても、落ち込む必要はありません。銀行が具体的な理由を教えてくれることはほとんどありませんが、本稿で紹介した「7つの原因」に立ち返って、提出した書類や情報に何か足りない点がなかったか、改めて確認してみましょう。 - 改善して再挑戦
「ウェブサイトの情報が足りなかった」「事業計画が曖昧だった」など、見つかった改善点を直して、別の銀行に改めて挑戦してみましょう。一度の審査落ちも、次の成功への大きな一歩になります。
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結論:準備が9割。法人口座開設に前向きに取り組みましょう
法人口座の開設に厳しいルールがあるのは、銀行が法律によって、犯罪に使われるお金の流れを止める役割を担っているためです。審査は、事業の将来性を評価するものではありません。難しいものではなく、一つひとつの作業をこなしていけば大丈夫なのです。申請した法人が「明確で、きちんとした、信頼できる事業である」ことを確認するための単なる手続きに過ぎないのです。
このガイドでお伝えした通り、法人口座開設を成功させるには、この4つのポイントが重要です。
- 審査の根底にあるルールが、法律で定められていることを理解すること。
- 事業の実態や目的、資本金、本店所在地など、審査で特に見られるポイントを把握し、指摘されやすい点をなくすこと。
- 会社の状況に合った銀行を、よく考えて選ぶこと。
- そして何よりも、矛盾のない完璧な書類を準備し、事業内容を明確に説明できるようにしておくこと。
法人口座開設を成功させる鍵は、準備が9割です。 このガイドで得た知識を武器に、一つひとつのステップを丁寧に進めれば、最初のハードルは決して高いものではありません。
法人口座の開設は、会社経営のスタートラインに過ぎません。その後の会社設立手続き、税務署への届出、日々の経理、そして事業成長を加速させる資金調達戦略まで、ほまれ税理士法人は、あなたの成長をあらゆる側面からサポートするパートナーです。
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