税務調査は過去何年分?原則「3年」、最大「7年」の法則を解説します

はじめに:調べるほど、不安になっていませんか?

こんにちは!税理士の井上です。

この記事を読んでいるあなたは、おそらく「税務調査 何年」といったキーワードで検索し、いくつかのサイトを見た後かもしれません。

そして、「3年」「5年」「7年」と、サイトによって違うことが書かれていて、調べる前よりも、かえって不安になっていませんか?

その感覚、無理もありません。なぜなら、その数字はどれも、状況によっては「正解」だからです。その「状況ごとの正解」を誰にでも分かるように、分かりやすく解説します。


税務調査で遡って調べられる期間は、実はあなたの申告内容の「深刻度」によって明確にルールが分かれています。

この記事を最後まで読めば、「①通常の場合」「②申告漏れなどがあった場合」「③悪質な不正があった場合」で期間がどう変わるのか、その理由を理解し、正しい知識を身につけることができます。

目次

税務調査の対象は、まず「過去3年分」が基本

まず結論から言うと税務調査で調べられるのは、ほとんどの場合、過去3年分です。

これは税務署の「慣例」のようなもので、実に8割以上の調査が3年分で終わると言われています。

【重要】ただし、「3年でOK」と勘違いしてはいけない

では、なぜ3年なのでしょうか?それは、税務署が「直近3年間の申告が正しければ、それ以前もきっと正しいだろう」と、効率を考えて対応しているからです。

しかし、これはあくまで税務署側の都合による「慣例」であって、「3年経てば、昔のことは見せなくていい」という、私たちの「権利」ではありません。

この違いを理解しておかないと、「なぜ、3年より前の資料も見せる必要があるんですか?」と調査官に反論してしまい、いらぬ不信感を招くことにもなりかねません。

税務調査の対象期間を決める「3年・5年・7年」の分岐点

税務調査の対象期間は、調査の過程で発覚した内容の深刻度に応じて、3年から5年、そして最大7年へと段階的に拡大していきます。この「3年・5年・7年」という期間が、どのような基準で判断されるのかを正確に理解することが、税務調査を乗り切るための第一歩です。

①通常の場合は「過去3年分」から始まる

まず、税務署からの事前連絡で伝えられるのは、基本的に「過去3年分」の調査です。

調査官は、まずこの3年分の帳簿や申告書をチェックします。ここで特に大きな問題が見つからなければ、調査はそのまま無事に終了、というのがほとんどのケースです。

ですから、日頃からきちんと経理・申告をしていれば、何も心配する必要はありません。


 ②申告漏れなどがあった場合は「過去5年分」に広がる

では、なぜ申告漏れなどが見つかると、調査期間が5年に広がるのでしょうか?

【ポイント】実は、法律上の基本ルールは「5年」だから

実は、税金の法律では、「税務署が申告の間違いを正せる期間は、原則5年間」と定められています。

つまり、税務署は、本来ならいつでも5年分を調べる権利を持っています。

普段の調査が「3年分」で終わっているのは、単に税務署側の都合(効率)で、その権利の一部しか使っていないだけなのです。そのため、3年分の調査でミスが見つかれば、「では、法律の原則通り、5年分、見せてもらいますね」となるわけです。

どんな時に「5年分」に広がるのか?2つのきっかけ

では、どんな時に調査官は「3年分だけでなく、5年分見せてもらいます」と判断するのでしょうか。きっかけとなるのは、主に次の2つのケースです。


  1. 「このミス、昔からやっていそうだな」と疑われた時

例えば、3年分の調査で、社長のプライベートな食事が「交際費」として処理されているのが見つかったとします。調査官は、「これは、今年だけのうっかりミスではなさそうだ。もっと前から、同じやり方を続けている可能性が高いな」と考えます。そして、その間違いの習慣性を確かめるために、調査範囲を5年分に広げるのです。

  1. そもそも申告をしていなかった(無申告)がバレた時

申告義務があるのにしていない「無申告」が見つかった場合は、議論の余地なく、自動的に過去5年分が調査対象になります。これは、所得の金額に関係なく適用される、非常に重い扱いです。
③悪質な不正があった場合は「過去7年分」に

調査期間が最長の7年にまで広がるのは、最も悪質なケース、つまり「脱税」が疑われた場合です。これは、単なる計算ミスや勘違いとは、全く次元の違う話。

帳簿の改ざんや売上を隠すなど、「意図的に税金を逃れようとした」と判断されると、最も重いペナルティである「重加算税」が課されます。


そして、この「重加算税」の対象となるような悪質な不正の時効が「7年」であるため、税務署もその不正の全体像を解明するために、調査期間を最長の7年にまで広げる権限を持っているのです。

ですから、「調査が7年に伸びる」と「重加算税が課される」は、ほぼセットだと考えてください。この段階では、調査も非常に厳しくなり、追加で支払う税金も、もちろん高額になります。

【法律の裏付け】調査期間を決める「国税通則法」とは?

なぜ、税務調査の期間は「3年・5年・7年」と変わるのでしょうか?

それは「国税通則法」という法律で、税務署が申告内容を遡って修正できる期間がきちんと定められているからです。


この法律の第70条に調査の「時効」について書かれています。 要点を簡単にまとめると次のようになります。

  • 原則(申告漏れなど)5年
  • 悪質な不正(脱税)7年

「あれ、じゃあいつも言われる『3年』というのは何?」と疑問に思いますよね。

あの「3年」というのは、法律で決まった最短期間ではなく、「5年という権利を持っている税務署が、効率のために、まずは3年分だけを調べている」という、あくまで実務上の慣例なのです。

この「法律上のルール(5年・7年)」と「実務上の慣例(3年)」の違いを理解しておくことが、税務調査の期間を正しく知るための、一番のポイントです。

「うっかりミス」と「悪質な不正」、その決定的な違いとは?

調査期間が7年になるかどうか、その分かれ目となるのが、あなたの申告が「ただの間違い」なのか、それとも「意図的な不正」なのか、という点です。

法律の言葉では「偽りその他不正の行為」と呼ばれますが、簡単に言えば、「税務署をだまそう」という、はっきりとした意思を持って行われる、悪質な行為を指します。

具体的には、次のような行為が当てはまります。

  • 二重帳簿を作る 

税務署に見せるための「嘘の帳簿」と、本当の数字を記録した「本当の帳簿」を、2種類作っている。

  • 証拠書類を隠す・捨てる 

都合の悪い請求書や領収書を、わざと隠したり、シュレッダーにかけたりする。

  • 売上を、わざと抜く 

現金での売上をレジに通さず、帳簿につけないなどして、売上そのものを無かったことにする。

  • 架空の経費をでっち上げる 

実際には払っていない経費を、払ったことにして帳簿につける。白紙の領収書に、自分で金額を書き込むなども含まれます。

  • 他人名義の口座を使う 

家族や従業員の口座に売上を振り込ませるなどして、自分の所得を隠す。

  • 調査官への嘘の説明

税務調査の場で、事実とは違う、ごまかしの説明をする。


これらはすべて「バレなければ、税金を安くできる」という、明確にごまかしたい意思のもとに行われる行為です。そのため、単なるミスとは全く違う、重いペナルティの対象となるのです。

【要注意】相続税と贈与税は、ルールがさらに特別です

法人税や所得税の「原則5年、不正なら7年」というルールに加え、特に注意が必要なのが「相続税」と「贈与税」です。


相続税:亡くなった方の、過去10年以上の「お金の動き」が見られる

相続税の調査では、亡くなった方(被相続人)の、過去10年以上のお金の流れがチェックされます。

これは、10年前の申告ミスを今さら指摘するためではありません。「亡くなった時点で、本当に相続すべき財産は、一体いくらだったのか?」を正確に知るためです。

そのために、特に疑われるのが「名義預金」です。これは、亡くなった方が生前に、家族の名義で作っていた預金のこと。例えば、8年前に孫名義の口座に300万円が送金され、手付かずで残っていた場合、「これは、お孫さんへのお小遣いではなく、亡くなった方のお金ですね」と判断され、相続財産に加えられてしまうのです。

まさに相続税の調査とは、故人の「財産の総点検(棚卸し)」。そのために、長い期間の記録が必要になる、というわけです。

贈与税:時効が「6年」と、1年長い理由

贈与税の時効は、原則6年(悪質な場合は7年)と、他の税金より1年長く設定されています。

なぜなら、贈与税の申告漏れはすぐにはバレにくいからです。

多くの場合、財産をあげた方が亡くなった後の相続税調査のタイミングで、何年も前の贈与が初めて見つかります。その時に「もう5年経ったから時効です」とならないよう後からでもきちんと課税できるように、特別に期間が長くされているのです。

 税務調査で特に狙われやすい、5つの「論点」

税務調査官は、過去の経験から「不正が起こりやすいポイント」を知り抜いています。調査期間に関わらず、以下の5つの「急所」は特に厳しくチェックされる傾向があります。あなたの会社は大丈夫か、確認してみましょう。


1. 帳簿や書類が、法律通りに保管されていない

調査官から「〇〇を見せてください」と言われたときに、「ありません」「捨てました」と答えるのは最悪の対応です。それだけで「何かを隠しているな」と、強い疑いを招きます。

【書類の保存期間 ルール早見表】

対象者保存すべき期間
法人原則7年間 (赤字が出た年度は10年間
個人事業主(青色)帳簿や決算書は7年間、請求書などは5年間
個人事業主(白色)帳簿は7年間、その他の書類は5年間

このルールを守ることが、全ての対策の基本です。

2. 社長の家族名義の、不自然なお金の動き

税務署が見ているのは、口座の名義人(名前)ではなく、「そのお金は、実質的に誰のものか?」という点です。

社長の家族名義の口座に、社長自身しか知らないような入出金があったり、通帳や印鑑を社長が管理していたりすると、「これは社長個人の隠し財産(=名義預金)ですね」と判断される可能性があります。

3. 決算書にある「役員貸付金」という科目

決算書に「役員貸付金」という文字があると、調査官はほぼ確実に「これは何ですか?」と質問します。会社のお金を、社長が個人的に使っている(=役員賞与の隠れ蓑)のではないか、と疑われるからです。

もし、これが単なる「社長へのボーナス」と判断されると、会社の経費とは認められず、会社と個人の両方で、余計な税金がかかる三重苦に陥ります。

4. 海外とのお金のやり取り

近年、国税庁が最も力を入れている分野の一つです。海外の子会社との取引価格を操作して、日本の利益を海外に移して税金を安くしようとしていないか、などが厳しくチェックされます。

各国の税務当局は、ネットで繋がっており、海外だからバレない、ということは、もはやありえません。

5. 「3年分です」と言われたのに、調査が長引く

最初に「調査は3年分です」と言われても、安心はできません。それはあくまで最初の予定です。

調査の途中で怪しい点が見つかれば、調査官はその場で「では、5年(または7年)分、見せてもらいます」と、調査範囲を広げることができます。「話が違う!」と慌てないよう、心の準備をしておきましょう。

税務調査の不安を、今日からできる「安心」に変えるために

これまでの話で、少し不安が大きくなってしまったかもしれません。

ですがご安心ください。正しい知識は、未来のリスクから自分自身を守るための心強い味方になります。

不安を解消するために今日からできる具体的な対策は、主に次の3つです。


1. 日々の「当たり前」の経理を丁寧に行う

税務調査への最高の対策は、特別なことではありません。毎日の売上や経費を、証拠となる書類(請求書や領収書など)と共に、きちんと記録・整理しておくこと。この地道で、当たり前の積み重ねこそがあなたの会社への信頼の土台となります。

2. 税理士を経営のパートナーとして日頃から頼る

税金のルールは、毎年少しずつ変わる、複雑なものです。自己判断で進めてしまうと、後で「知らなかった」では済まない事態になることもあります。

税理士は、調査の時だけスポットで相談する相手ではなく、日頃から経営や税務のリスクを共に管理する「パートナー」です。定期的に相談し、問題の芽を小さいうちに摘んでおくことが、最高の節税であり、リスク管理です。

3. もし調査の連絡が来たら、まず最初に税理士へ

万が一税務署から連絡があっても、一人で抱え込まないでください。まずやるべきことは、顧問税理士に連絡をすることです。専門家である税理士が、あなたの一番の味方として冷静に対応するための道筋を示してくれます。


私たちほまれ税理士法人は、あなたの会社の頼れる「パートナー」でありたいと願っています。

税務調査はもちろん日々の経営に関するどんな小さな不安でも、一人で悩まず、いつでもお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

税理士/近畿税理士会所属/税理士登録年2005年/登録番号102807/会計システムの開発エンジニアとしてキャリアをスタート。その後、大阪市内の税理士法人での勤務を経て2005年に税理士として登録し、個人事務所を開業。法人化などを経て、現在はほまれ税理士法人の代表を務める。 「後世に誇れる仕事をする」を理念に、これまで2,000社以上の顧問先を支援。企業のライフステージに合わせた総合的なコンサルティングを提供している。

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