起業の資金、最低いくら必要? 知っておきたい目安と調達のコツ 

まず知っておきたい起業のお金の話

こんにちは!税理士の井上です。

起業の資金は、どれくらい必要なのでしょうか。この疑問は、起業を考える方がまず抱くものです。日本政策金融公庫が2024年度に行った調査によると、事業を始めるのにかかった費用の平均は985万円でした。この金額を見て、少し難しそうだと感じるかもしれません。

しかし、同じ調査での開業費用の平均は580万円でした。さらに、起業資金が500万円未満だったケースも全体の4割以上を占めています。このことから、たくさん資金がなくても起業している人が少なくないことがわかります。

必要な起業資金は、どんな事業をどのくらいの規模で始めるかによって大きく変わります。自分の事業に近い例を参考にすると、より現実的な資金計画を立てられます。

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目次

意外と見落としがち!起業資金の2つの種類

起業に必要な資金は、大きく分けて2つの種類があります。この違いを知っておくことでしっかりとした資金計画が立てられます。

1. お店を始めるための「初期費用(設備資金)」

初期費用とは、事業をスタートさせるときに一度だけかかるお金のことです。具体的には、次のようなものが含まれます。

  • 物件にかかる費用: 事務所やお店の敷金、礼金、仲介手数料、前払家賃など。
  • 内装・外装工事費: お店の内装や外観を工事する費用。
  • 設備費: パソコン、事務機器、机、椅子、調理器具、製造機械など。
  • 備品・消耗品費: 事業で使う文房具や名刺など。
  • Webサイト制作費: ホームページの制作費用や維持費用など。

これらの費用は、事業を始める準備の段階でまとまったお金が一気に出ていくのが特徴です。

2. 事業を回すための「運転資金」

運転資金とは、事業を続けていくために毎月のようにかかる費用のことです。お店を始めるための初期費用ばかりを考えていると、この運転資金が足りなくなって事業を続けられなくなる可能性があります。

具体的な運転資金の例は以下の通りです。

  • 人件費: 従業員に払う給料やボーナスなど。
  • 仕入れ費用: 商品や材料を買うお金。
  • 家賃: 事務所やお店の賃料。
  • 水道光熱費・通信費: 電気代、ガス代、水道代、インターネット代など。
  • 販促費: 広告や宣伝にかかる費用。

特に事業が安定するまでの間や、商品が売れてから実際にお金が入ってくるまでに時間がかかる場合は、運転資金の確保がとても重要になります。最低でも3か月分、できれば6か月分くらいの運転資金をあらかじめ用意しておくのが理想的です。

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【起業の仕方別】最低限必要な資金の目安と中身

個人事業主は「0円」から始められる場合も

個人事業主として事業を始める場合、会社のように役所への登記手続きは必要ありません。お近くの税務署に「開業届」という書類を出すだけで、すぐに事業を始められます。この書類を出すこと自体にお金はかからないため、もしパソコンやインターネット環境をすでに持っていれば、初期費用をほとんど0円に抑えることもできます。

ただし、税金で得をするためには、「開業届」を出すのと同時に「青色申告」の申請をしておくことが非常に大切です。この申請を忘れると、「白色申告」という扱いになり、最大65万円の控除や、赤字を翌年以降に繰り越すなどの制度が適用できません。開業後の手続きまで考えて計画を立てておくことが必要です。

会社を作るのにかかる最低限のお金

会社(法人)を設立する場合、個人事業主とは違って、手続きに必要なお金や専門家に払う費用がかかります。

株式会社を作る費用

株式会社を作るには、最低でも20万円から22万円ほどのお金が必要です。内訳は以下の通りです。

  • 登録免許税: 最低でも15万円。
  • 定款の認証手数料: 公証役場で会社のルールを定めた書類(定款)を認めてもらうための手数料で、資本金の額によって1万5,000円から5万円かかります。
  • 収入印紙代: 紙で定款を作る場合は4万円が必要ですが、パソコンで電子データとして作れば、この費用はかかりません。

合同会社を作る費用

合同会社は、株式会社に比べて安い費用で設立できるのが特徴です。最低6万円から10万円ほどで会社を作れます。安くできる理由は次の2つです。

  • 「定款の認証」が不要: 会社のルールを定めた書類(定款)を公証役場で認めてもらう必要がないため、その手数料がかかりません。
  • 登録免許税が安い: 株式会社の半分以下の、最低6万円からで済みます。

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資本金は「1円」でもOK?

法律上、資本金は1円からでも会社を作ることができます。しかし、実際に事業をスムーズに進めていくためには、ある程度の資本金を用意しておくことをおすすめします。

資本金は、その会社の規模や経営が安定しているかを外部に示す、大事な目安になります。銀行からお金を借りる時や、取引先が取引するかどうかを考える時にも、資本金の額が会社の信用度を判断する材料の一つになります。

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資本金と資本準備金をうまく使い分ける方法

起業の資金が1,000万円以上ある場合、半分を「資本金」にせず、「資本準備金」として別に分けておくことで、下記のように税額が抑えられる可能性があります。

  1. 設立当初の2年間は消費税の納税義務が免除される(インボイス登録事業者は除く): 資本金が1,000万円未満(たとえば999万円)であれば、会社を作ってから最長2年間、消費税の納税義務が免除されます
  2. 会社の予備費をしっかり確保できる: 資本金は999万円に抑えつつ、残りの金額を資本準備金として分けておくことで、登記簿には書かれない形で、会社の運転資金やもしもの時のための予備費を確保できます。

この方法は、自己資金がたくさんある場合でも、消費税の納税義務が免除されるので、とても効果的です。

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【業種別】起業資金の目安と例

お店を持つビジネスの資金目安

飲食店や美容室、お店などの店舗型ビジネスは、最初にかかる費用が高くなりがちです。日本政策金融公庫の調査で、事業を始める費用の平均が985万円と高くなっているのも、店舗型ビジネスの費用が大きいことが影響しています。

一般的なお店の開業にかかる費用は、平均で1,000万円前後と言われています。内訳は次の通りです。

  • 物件取得費: 敷金、礼金、仲介手数料など。
  • 内装・設備費: お店の内装工事、厨房設備、レジ、机や椅子などを買う費用。
  • 運転資金: 最低でも3~6ヶ月分の家賃、人件費、仕入れ費用など。

また、資金をどう集めるかという点で考えると、お店を持つビジネスの場合、開業にかかる費用が1,000万とすれば自分で用意するお金の目安は、開業資金全体の3割(約300万円)程度とされています。

初期費用を抑えられる在宅・オンラインビジネス

一方で事務所やお店がいらないビジネスは、最初に必要な費用を大きく抑えられます。Webライター、Webデザイナー、コンサルタント、オンライン講師などは、パソコンとインターネット環境さえあれば始められるため、起業にかかるお金の目安は数万円から50万円以下に収まることもあります。

これらのビジネスは、自宅で作業することで家賃や水道光熱費といった毎月かかる費用を抑え、運転資金の負担も軽くなります。また、自分の専門知識やスキルをそのまま事業の強みにできる点もメリットです。

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自己資金が少なくても大丈夫!賢く資金を調達する方法

融資:起業資金の調達の定番

日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」の最新情報と条件

日本政策金融公庫は、起業する方にとって一番身近な融資先のひとつです。2024年3月に、これまでよく使われていた「新創業融資制度」が廃止され、「新規開業資金」に統合されました。そして、2025年3月にはさらに名称が変更され、現在は「新規開業・スタートアップ支援資金」として提供されています。

この制度の大きなポイントは、自己資金の条件がなくなったことです。これにより、自分のお金がまったくなくても融資を申し込めるようになりました。しかし、これは「自己資金がゼロでも必ず融資を受けられる」というわけではありません。金融機関の審査では、事業主がどれだけ真剣に事業に取り組むかを示すために、自己資金がどれだけあるか、どうやって貯めたかが今でも重要視されています。

融資の審査で大事な3つのポイント

融資の審査では、主に次の3つのポイントが重視されます。

  1. 自己資金があるかどうかと、どうやって貯めたか: 計画的に貯めてきた記録は、その人が信頼できるかどうかを示す大事な要素です。単にお金がたくさんあるだけでなく、「どういう方法で貯めたのか」という過程も重視されます。
  2. これまでの事業経験: 過去に同じような仕事の経験があったり、事業に関わる資格やスキルを持っていたりすると、その事業が成功する可能性が高いと判断されます。
  3. 事業計画が具体的か: 「この事業はきっと成功する!」と融資担当者を納得させるために、具体的で説得力のある事業計画書(創業計画書)が必要です。

補助金・助成金を活用しよう

補助金や助成金は、国や地方自治体から出るお金で、基本的に返す必要がありません。ものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金、IT導入補助金など、2025年度も様々な制度があります。

大きなメリットがある一方で、いくつか注意点もあります。補助金や助成金は、事業で使ったお金を後から支給する「後払い制」が原則です。そのため、起業の時のお金すべてを補助金だけでまかなうことはできません。融資や自分で用意したお金で、まずは事業を回せるようにした上で、事業を助けるためのお金として活用するのが良い方法です。

クラウドファンディングや出資という選択肢

クラウドファンディングは、インターネットを通じてたくさんの人から少しずつお金を集める方法です。このお金は返す必要がなく、担保や保証人もいらないので、起業のリスクを抑えられます。資金を集めるだけでなく、事業が世の中に受け入れられるかを試したり、事業を始める前からファンを作ったりできるのも大きなメリットです。

また、事業の将来性を評価してくれる個人投資家(エンジェル投資家)やベンチャーキャピタル(VC)からお金を出してもらう選択肢もあります。これは特に、これまでにない技術やアイデアを持ったスタートアップにとって、とても有効な資金調達の方法です。

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【税理士が教える】起業時にできる、税金を抑えるための対策

「開業費」を上手に使って経費にする

起業の準備で使ったお金は、税金の世界では「開業費」として経費にできます。ただし、この開業費は一般的な経費とは少し違い、「繰延資産」という特別な資産に分けられます。

このおかげで、開業費を払った年に一度に経費にするだけでなく、5年間で少しずつ経費にしたり、好きな時に全額を一気に経費にしたりできます

この方法の一番のメリットは、起業して数年は利益が出にくいと予想される場合、あえて開業費をそのままにしておけることです。そして、事業が軌道に乗って利益が出始めたタイミングで、まとめて経費にすることで、その年の税金を効果的に減らすことができます。

「創立費」と「開業費」の違い

会社を作る場合、「創立費」と「開業費」という、少し似ているけれど違う2つの費用を分けて考える必要があります。

  • 創立費: 会社を作る前(登記する前)にかかった費用(登記費用など)。
  • 開業費: 会社を作った後(登記した後)から、実際に事業を始めるまでにかかった費用(例:広告宣伝費、名刺を作る費用など)。

ちなみに、個人事業主には「創立費」は関係ありません。

資本金の額で、消費税を払うかどうかが変わる

会社を作る時、資本金の額をどうするかは、事業を始めてからの税金に大きく影響します。資本金を1,000万円未満にして会社を設立すると、作ってから最長2年間、消費税の納税義務が免除されます(インボイス登録事業者を除く)

これは、事業が安定するまでの税金の負担を大きく減らせます。一方で、資本金が1,000万円以上の場合、最初の年から消費税を払う義務が発生するので、会社を作る時の資本金の額は慎重に決める必要があります。


消費税を払わなくていい免税事業者期間を長くする条件

免税事業者の期間を最大限に活用するには、会社を作って2期目(2年目)の条件も知っておく必要があります。2期目も免税事業者となるためには、1期目の最初の6ヶ月間の売上、または給料などの合計が1,000万円以下であることが条件です。また、1期目の事業期間を7ヶ月以下に設定することで、この条件をクリアしやすくなる場合もあります。

事業を始めてからも使える税金対策を知っておこう

事業を始めてからも、税金の負担を減らすためのさまざまな制度があります。

  • 小規模企業共済: 小規模企業の経営者や個人事業主のための「退職金制度」です。支払った掛け金は、税金を計算する際に、払った金額すべてが所得から差し引かれます。
  • 会社の経費になる範囲: 会社にすると、個人事業主よりも経費にできる範囲が広がります。たとえば、社長への給料や出張手当を出したり、自分の持家を会社に社宅として貸して家賃を経費にしたりできます。
  • 赤字の繰り越し: 事業が赤字になった場合、その損失を翌年以降の黒字と打ち消し合える制度です。個人事業主の場合、この繰り越し期間は最長3年間ですが、会社の場合は最長10年間です。

失敗しない資金計画の立て方と、創業計画書の大切さ

創業計画書の作成

融資を受けるためには、「創業計画書」の作成が必要です。この書類は、融資担当者に「この事業は将来性がある」「きちんとお金を返せる」と納得させるための、とても大事な資料です。

特に審査で重視されるのは、次の3つの項目です。

  1. これまでの経歴: これまでの仕事の経験が、なぜ今回の事業の成功につながるのかを具体的に説明します。
  2. 必要なお金と集め方: 事業に必要なすべてのお金と、自分で用意したお金、融資、その他の方法で集めるお金の内訳をはっきりさせます。
  3. 事業の見通し: 売上や費用、利益がどうなるかを予測し、その数字がなぜそうなるのか、根拠を明確に示します。

日本政策金融公庫のウェブサイトには創業計画書のひな形があります。売上の予測には市場調査の結果を、設備にかかる費用には見積書を添えるなど、具体的な裏付けを示す資料も付けておくことが、融資を成功させるために有利に働く可能性があります。

最高のゴールに向けた最初の一歩

起業のためのお金を用意するには、事業を成功させるための具体的なシミュレーションをすることです。最適な会社の形を考え、そのために税金の知識を戦略的に使うことが求められます。

まずは、自分の事業に合わせた初期費用と運転資金の目安を知り、無理のない資金計画を立てることから始めましょう。その上で、日本政策金融公庫の融資や補助金・助成金といった資金集めの方法を組み合わせることで、たとえ自己資金が少なくても、起業の道は開かれます。

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この記事を書いた人

税理士/近畿税理士会所属/税理士登録年2005年/登録番号102807/会計システムの開発エンジニアとしてキャリアをスタート。その後、大阪市内の税理士法人での勤務を経て2005年に税理士として登録し、個人事務所を開業。法人化などを経て、現在はほまれ税理士法人の代表を務める。 「後世に誇れる仕事をする」を理念に、これまで2,000社以上の顧問先を支援。企業のライフステージに合わせた総合的なコンサルティングを提供している。

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