「税務調査が10年以上来ない」は安全の証か?個人の税務調査の真実 

はじめに:「うちは真面目だから、調査が来ない」…その自信、もしかしたら危険信号かもしれません

こんにちは!税理士の井上です。

先日、長年地域で愛されるお店を経営されてきたベテランの個人事業主の方が、初めてご相談に来られました。その方が、こうおっしゃったのです。

「先生、うちはもう10年以上も税務調査が来ていないんです。真面目にやってきた証拠ですよね?」

私は「はい、素晴らしいことですね」と頷きつつも、専門家として少しだけ心がヒヤリとしました。

なぜなら、その「長年の静けさ」こそが、時に大きなリスクのサインになり得ることを、私は知っているからです。「何も言われない」=「全てが完璧」とは限りません。もし、良かれと思って続けてきた経理処理に、たった一つ、長年の「クセ」のような間違いがあったとしたら…?

この記事は、そんな「静かに忍び寄るリスク」に気づかず、安心してしまっている、誠実な経営者のあなたにこそ読んでほしいです。

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「税務調査は運次第」「売上が小さければ来ない」…それは、KSKが申告書をチェックする以前の常識です。
現代の税務調査は、膨大なデータ分析に基づき、チェックすべき対象が、極めて合理的に選ばれています。

この記事を最後まで読めば「10年以上調査が来ない」本当の理由と、そこに潜むリスク、そして「いつ来ても大丈夫」な安心の体制を今から作る方法が分かります。

関連記事:税務調査とは?【完全ガイド】いつ来るか・流れ・対策を税理士が解説  |ほまれ税理士法人

目次

「調査の確率は1%」という数字のワナ

まず多くの方が安心材料にしがちな「税務調査の確率」について、データを見ていきましょう。

国税庁の発表によると、個人事業主への本格的な税務調査は、確率にすると1.1%未満、よく「100年に1度」と言われるほど低い数字です。

ただし、この「1%」という数字で安心しないでください

なぜなら税務調査は、ランダム(無作為)に行われるわけではないからです。

税務署は、限られた時間と人員の中で、最も効率的に間違いや不正を見つけ出すことを目的にしています。つまり、申告内容に少しでも怪しい点がある事業者を、膨大なデータの中から「狙って」選び出しているのです。

ですから、全体の確率が低いことは、あなたの申告が安全であることの証明にはなりません。

大切なのは、「自分は、税務署から見て『調査する価値がある』と思われやすいかどうか」という視点なのです。

【参考】個人事業主と法人の調査確率の比較

対象調査の確率(実調率の目安)
個人事業主約1.1%
法人約3.2%

この数字だけを見ると、個人事業主は法人より安心に見えるかもしれません。しかし、これはあくまで「全く問題のない申告者」も含めた全体の平均値。少しでもリスクのある申告者に絞れば、この確率は何倍にも跳ね上がると考えるべきです。

なぜ「10年音沙汰なし」が、逆に危険信号となり得るのか?

「10年以上も調査がないなんて、うちは優良な納税者なんだ」…そう思いたくなる気持ちは、よく分かります。しかし、税務署の見方は、少し違います。

理由①:税務署にとってあなたは「謎の存在」だから

税務署にとって長期間調査をしていない事業者とは、いわば「情報が古すぎる、謎の存在」です。

開業から10年も経てば事業内容は大きく変わっているはずなのに、手元にあるのは10年前の古い情報だけ。「この会社、今は一体どうなっているんだろう?申告は、本当に正しいのだろうか?」と、確認の必要性がむしろ高まっているのです。

つまり「しばらく調査がない」という事実自体が、次の調査先に選ばれる理由になってしまうこともあるのです。

理由②:そして、あなた自身の中に生まれる「気の緩み」という罠

そして、もう一つの危険は、あなた自身の心の中に生まれます。

10年も何もなければ「このやり方でいいんだ」という、根拠のない自信が生まれてしまいがち。その結果、知らず知らずのうちに経理が甘くなり、少し大胆な経費計上にも抵抗がなくなっていく…。

自分では「安全運転」のつもりが、リスクだけが静かに大きくなっていく。これこそが「10年音沙汰なし」の本当の怖さかもしれません。

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税務調査の対象はこうして選ばれる

では税務署は一体どのようにして、膨大な申告書の中から調査対象を選び出しているのでしょうか。

その中核を担うのが国税庁の巨大データベース「KSKシステム」と、それを動かすAI(人工知能)です。

  KSKシステム(国際総合管理システム)とは?申告書を分析する「巨大データベース」

KSKシステムとは、簡単に言えば、日本中の納税者の申告データや過去の納税実績、取引先から提出される支払調書といった、あらゆるお金の情報を一元管理する、国税庁の巨大なデータベースです。

そして、このシステムは、ただ情報を保管しているだけではありません。あなたが提出した確定申告書を、この膨大なデータと照らし合わせ、自動的に「異常値」がないかをチェックする、強力な分析ツールなのです。

KSKとAIが行う主なチェックは、次の2つの比較です。

  1. 「同業者」との比較 

あなたの会社の利益率や経費の割合が、同じ地域の、同じ業種の会社の平均値と大きくズレていないか。

  1. 「過去の自社」との比較 

去年に比べて、売上や特定の経費だけが不自然に増えたり、減ったりしていないか。

これらの比較分析によって、少しでも怪しまれる点があると、AIがあなたの申告書に自動でフラグを立てる、という仕組みです。
この現実が意味することは、税務調査の対象選びが、もはやベテラン調査官の「勘」頼みではない、ということです。
冷徹なデータ分析によって、候補者は機械的かつ客観的に絞り込まれている。まずは、その事実をしっかり認識しておきましょう。

税務調査に選ばれやすい、7つの「危険なサイン」

国税庁のAIは、あなたの申告書のどんな点に「おや?」と反応するのでしょうか。調査対象になりやすい、具体的な7つのサインを解説します。ご自身の申告書と見比べてみてください。

1. 売上が、毎年「1,000万円」の少し手前で止まっている

毎年980万円、990万円…といった売上が続くと、「消費税を払いたくないから、売上を調整しているのでは?」と疑われる、典型的なパターンです。

関連記事:税務調査は売上いくらから?「1,000万円」が基準と言われる理由  |ほまれ税理士法人

2. 経費や利益の動きが、毎年おかしい

売上は同じなのに、ある年だけ経費が急に増えている。あるいは、利益が毎年大きく変動している。こうした不自然な数字の動きは、「架空の経費や、売上隠しがあるのでは?」と見なされる原因になります。

3. 現金商売、または「申告漏れが多い」と有名な業種である

飲食や美容、建設といった現金のやり取りが多い事業は、昔から調査の重点ターゲットです。また、国税庁は毎年「申告漏れの多い業種ランキング」を発表しており、IT・コンサル業などは、特に厳しくチェックされる傾向にあります。

4. 顧問税理士がついていない

税理士の署名がない申告書は、「計算ミスや、意図的な不正が起こりやすいのでは?」と判断されがちです。

5. 過去に「重加算税」などの重いペナルティを受けたことがある

一度でも悪質な不正を指摘されると、税務署のデータベースに「要注意先」として記録されます。そのため、通常の事業者よりも短い間隔で、繰り返し調査が行われることが多くなります。

6. めったに使わない勘定科目が、突然出てきている

社長の退職金や、多額の貸倒損失(貸したお金が返ってこない損失)など、普段あまり見かけない項目が申告書に突然出てくると、AIは「おや?不自然な動きだ」と検知します。金額が大きく、税金を操作しやすい項目だからです。

7. そもそも申告していない(無申告)

言うまでもなく、これが最も重大なサインです。税務署は、あなたの取引先が提出した書類などから、あなたの収入を把握しています。「バレていない」ということは、まずありえません。

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税務調査の時効は5年?7年?遡って調べられる期間の限界

「もう10年も前のことだから、もし間違いがあっても時効だろう」…そう考えるのは、残念ながら間違いです。

税務署が過去の申告を遡って調べられる期間は、あなたの申告内容がどうだったかによって、「3年」「5年」「7年」の3段階に分かれています。

通常の場合:過去3年分

特に大きな問題が疑われていないごく一般的な税務調査では、直近3年分の申告書を調べられるのが基本です。

申告漏れや、単純なミスがあった場合:過去5年分

調査の結果、計算ミスなどの申告漏れが見つかった場合や、そもそも申告をしていない「無申告」の場合は、過去5年分まで遡って調査されるのが一般的です。

悪質な不正(脱税)があった場合:最大で過去7年分

意図的に売上を隠すなど、悪質な不正行為(脱税)があったと判断された場合は、ペナルティとして、最大で過去7年分まで調査期間が延長されます。

このように、あなたの申告内容に問題があればあるほど、より昔に遡って調べられる、という仕組みになっています。

「10年間調査が来ていない」からといって、10年前の申告ミスが許されるわけではない、ということを、しっかり覚えておきましょう。

関連記事:税務調査は過去何年分?原則「3年」、最大「7年」の法則を解説します |ほまれ税理士法人

「ただのミス」と「悪質な不正」、その決定的な違いとは?

調査期間が7年に延長されたり、最も重い罰金(重加算税)が課されたりする、最も悪質なケース。

それは、単なる計算ミスなどの「申告漏れ」ではなく、「偽りその他不正の行為」があったと判断された場合です。

「隠蔽(いんぺい)」と「仮装(かそう)」

簡単に言うと、これは「意図的に、税金を安くするため、事実を偽る」という積極的な行為のことです。具体的には、以下のようなものが典型例です。

  • 二重帳簿を作る 

税務署に見せるための「嘘の帳簿」と、本当の数字を記録した「本当の帳簿」を、2種類作っている。

  • 証拠書類を隠す・捨てる 

都合の悪い請求書や領収書を、わざと隠したり、シュレッダーにかけたりする。

  • 売上を、わざと抜く 

現金での売上をレジに通さず、ポケットに入れるなどして、売上そのものを無かったことにする。

  • 架空の経費をでっち上げる 

実際には払っていない外注費や人件費を、あたかも払ったかのように帳簿につける。白紙の領収書に、自分で金額を書き込むなども含まれます。

  • 他人名義の口座を使う 

家族や従業員の口座に売上を振り込ませ、自分の所得を隠す。
これらは、単なる「うっかりミス」ではありません。
明確な「ごまかす意思」を持って行われるため、税務署も、最も重いペナルティを課す対象としているのです。

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なぜ「脱税の時効」は、ほぼ成立しないのか?

「7年経てば、昔の不正は時効になる」…そう考えるのは、残念ながら大きな間違いです。
なぜなら、税金の世界には「時効のカウントをリセットする」という、厳しいルールがあるからです。

税務署が税金を取り立てる権利の時効は、原則5年です。しかし例えば税務署から督促状が届いたり、あなたが税金を一部でも納めたりすると、その時点で時効のカウントはゼロに戻り、そこから再び5年のカウントがスタートします。

税務署は、時効が成立してしまわないよう、法的な手続きを必ず行います。そのため、ただ時間が過ぎるのを待って、納税を逃れることは、現実的に不可能なのです。

 申告の誤りと税務調査の期間・ペナルティ

誤りの種類どんな行為?調査は何年前まで?ペナルティの重さは?
単純な申告漏れうっかりミス、勘違いなど原則3年過少申告加算税: 追加税額の10~15%
無申告申告自体をしていない原則5年無申告加算税: 追加税額の15~20%
隠蔽・仮装(脱税)意図的に所得などを隠す、悪質な行為最大7年重加算税: 追加税額の30~40%

※上記に加え、納税が遅れた日数分の利息(延滞税)もかかります。

このように、あなたの申告が「うっかりミス」なのか、「意図的な不正」なのか。 そのミスの性質によって、その後の展開は全く変わってきます。まずは、ご自身の状況を客観的に見つめ直すことが何よりも大切です。

関連記事:【税理士が解説】税金の時効とは  |ほまれ税理士法人

【今日からできる】10年以上調査がないあなたが、今すぐやるべきこと

これまでの話で、少し不安が大きくなってしまったかもしれません。

でも、大丈夫。いたずらに怖がる必要はありません。大切なのは、状を正しく把握し、もし問題があれば先手を打って対策することです。

そのための第一歩として、まずはご自身で過去の申告を振り返ってみましょう。

過去の申告書、セルフチェックリスト

もし以下の項目に一つでも「はい」がつくなら、一度専門家に相談することをおすすめします。

  • 売上が毎年900万円台で止まっていないか?
  • 前年に比べて経費だけが不自然に増えている年はないか?
  • 「これは、本当に仕事用?」と聞かれたら、自信を持って答えられない経費が混ざっていないか?
  • 現金でもらった売上の一部を申告に入れていないということないか?
  • 過去7年分の請求書や領収書は、すべて完璧に揃っているか?
  • 事業が大きくなっているのに税理士のチェックを一度も受けたことがないか

一番の対策は、やはり「税の専門家」に相談すること

セルフチェックで「問題なさそうだ」と感じても、それが税務署のプロの目から見ても同じとは限りません。「これくらい大丈夫」という自己判断が思わぬリスクに繋がることも。

最終的なチェックは、やはり税理士という専門家の客観的な視点で行うのが確実です。
税理士に相談することで、具体的には次のようなメリットがあります。

1. 客観的なリスク診断
あなたの申告書の「どこが、どのくらい危ないのか」を税務調査官と同じプロの目線で客観的に診断します。

2. ペナルティを軽くする「修正申告」という選択肢
もし過去の申告に間違いが見つかっても、調査の連絡が来る前に自主的に「修正申告」をすれば、本来かかるはずだった罰金(過少申告加算税など)が免除されることがあります。これは、金銭的に非常に大きなメリットです。

3. 未来の「安心」を作るための、仕組みづくり
過去の問題を解決するだけでなく、将来、税務調査の心配をしなくても済むような、正しい経理のやり方や、書類の管理方法を教えます。


その「長年の不安」、私たちと一緒に「スッキリ」しませんか?

「10年以上調査がない」という何も連絡がない状況は、油断しているとある日突然、大きな問題に繋がりかねません。

しかしご安心ください。今から専門家と一緒に対策をすれば、その漠然とした不安を、確かな「安心」に変えることができます。

長年、心の片隅で「これで、本当に大丈夫かな…」と思い続けてきた方がいらっしゃいましたら、まずはお気軽にご連絡ください。

私たちほまれ税理士法人はその不安を「払拭」し、あなたが事業に100%集中できる環境を作るお手伝いをします。一人で抱え込まず、まずは、その胸の内をお聞かせください。

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この記事を書いた人

税理士/近畿税理士会所属/税理士登録年2005年/登録番号102807/会計システムの開発エンジニアとしてキャリアをスタート。その後、大阪市内の税理士法人での勤務を経て2005年に税理士として登録し、個人事務所を開業。法人化などを経て、現在はほまれ税理士法人の代表を務める。 「後世に誇れる仕事をする」を理念に、これまで2,000社以上の顧問先を支援。企業のライフステージに合わせた総合的なコンサルティングを提供している。

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