【はじめに】受給後の「税務」まで見据えた、資金計画の重要性
こんにちは!税理士の井上です。
設備投資や人材確保のために、補助金や助成金の活用を検討される経営者様は年々増えています。しかし、採択され入金された後に、想定外の事態に直面されるケースが後を絶ちません。
それは、「補助金収入に対する課税」の問題です。
多くの補助金は、会計上「収益」として計上されるため、決算において法人税の課税対象となります。その結果、手元の資金を使途に充ててしまった後で、多額の納税義務が発生し、かえって資金繰りが悪化してしまうという事例です。
補助金活用において重要なのは、単に「採択されること」だけではありません。「採択に向けた精度の高い事業計画」と、「受給後の税負担を考慮した資金計画(出口戦略)」の双方が不可欠です。
この記事では、経営リスクを回避し、真に会社の成長に繋げるための補助金・助成金の活用法と、専門家である税理士が関与すべき理由について、実務的な観点から解説します。
まずは定義を整理。「補助金」と「助成金」の決定的な違い
「補助金」と「助成金」は、どちらも国や自治体から支給される返済不要の資金ですが、その性質と受給難易度には明確な違いがあります。
事業目的に合わせて適切な制度を選択するために、まずはその違いを正しく理解しましょう。
1. 助成金:要件を満たせば受給できる「要件合致型」
主な管轄:厚生労働省
目的:雇用環境の整備、人材育成、働き方改革の推進など
特徴: 雇用保険の適用事業所であることなど、所定の要件をすべて満たし、不備なく申請を行えば、原則として受給が可能です。予算枠による競争倍率は基本的にありません。
2. 補助金:事業計画の優劣を競う「採択審査型」
主な管轄:経済産業省、中小企業庁
目的:新規事業の創出、生産性向上、技術革新など、国の政策目的に沿った事業支援
特徴: 予算には限りがあり、申請者全員が受給できるわけではありません。提出された「事業計画書」の内容が審査され、優れた計画であると評価(採択)された事業者のみが受給できます。採択率は制度によって異なり、非常に狭き門となる場合もあります。
つまり、助成金は「労務環境の整備」に主眼が置かれているのに対し、補助金は「事業の成長性や革新性」が問われる制度です。特に補助金においては、審査員を納得させるだけの論理的かつ実現可能性の高い「事業計画書」の作成が、成否を分ける決定的な要因となります。
補助金:審査をクリアして「大きな投資」に使うお金
補助金の多くは経済産業省(経産省)が担当していて、新しい事業を始めたり、設備投資をしたりといった、経済発展につながる活動を応援することが主な目的です。
もらえる金額は数百万円から数千万円、場合によっては数十億円にもなることがあります。
しかし、補助金は予算や件数に限りがあるため、申請しても必ずもらえるわけではありません。審査が厳しく、落ちてしまうこともあると理解しておきましょう。
また、原則として、事業を完了させた後にお金が支給されます。そのため、事業者は一時的に自分のお金で立て替えをしなければなりません。事前の資金繰り計画が非常に重要になります。
助成金:要件を満たせばもらえる「人」や「環境」を整えるお金
一方、助成金の多くは厚生労働省(厚労省)が担当していて、働く人の環境改善や、社員教育(人材育成)など、労働者をサポートすることが主な目的です。
もらえる金額は数十万円から百万円程度と、補助金に比べて比較的小規模です。
助成金は、決められた条件や計画を守り、実行すれば原則として支給されます。そのため、補助金と比べて申請のハードルは低い傾向にあります。
こちらも計画書は必要ですが、補助金のような厳しい外部審査がない場合が多いです。
税理士が果たす役割
これらの違いを踏まえ、税理士は単に書類作成を代行するだけではありません。あなたの会社の事業計画やお金の状況(特に立て替え資金があるか)を詳しく確認し、補助金と助成金のどちらが最適かを判断し、専門的なアドバイスを提供します。
中小企業が知っておくべき主要な補助金(2025年版)
2025年度も、中小企業が成長するために大切な補助金の公募案内は行われています。さらに、新しい経済の状況に合わせて、新しい支援制度も導入されています。
最新の傾向と特に注目すべき大型補助金
2025年度は、これまでも活用されてきた定番の補助金に加え、「成長加速化補助金」や「新事業進出補助金」など、新しい支援策がスタートしています。
特に「新事業進出補助金」は、新しいマーケットの開拓や、より利益の出る事業への挑戦を強く後押しするものです。
この補助金は、設備投資や会社の規模拡大をサポートする内容で、もらえる上限額が最大5億円にもなる、非常に大きな支援策として注目されています。
主要な4つの補助金の概要
中小企業の皆さんが一番知っておくべき、主な補助金は次の4つです。
- 新事業進出補助金:目的: 新しい事業(サービスや製品)の開発や展開を応援します。金額: 補助金の上限は2,500万円から7,000万円まで幅広く、補助してもらえる割合は1/2です。
- ものづくり補助金:目的: 会社の生産性を上げたり、これまでにない新しいサービスを開発するために、機械の導入費やシステム開発費などを支援します。金額: 補助金の上限は750万円から2,500万円(従業員の数で変わります)で、補助してもらえる割合は1/2または2/3です。
- IT導入補助金:目的: 会社でITツールやクラウドサービスを導入し、仕事の効率化やデジタル化(DX)を進めるのを手伝います。金額: 通常の枠だと上限は5万円から450万円以下で、補助してもらえる割合は1/2から2/3です。
- 小規模事業者持続化補助金:目的: 販路を広げたり、生産性を高めたいと考えている小規模な事業者のための少額(補助上限は50万円から200万円)の支援です。新事業進出補助金やものづくり補助金のような大きな補助金は、もらえる金額が多いため魅力的ですが、審査に通る(採択される)確率が低い傾向があります。これらの大きな制度で採択されるには、数千万円から数億円の投資に見合うだけのしっかりとした財務状況と、明るい将来性を示す信頼できる事業計画書が絶対に必要です。
主要補助金(2025年時点)の比較と特徴
| 補助金名 | 目的 | 補助上限額(目安) | 補助率(目安) | 難易度 |
| 新事業進出補助金 | 新分野進出 | 2500万円~7000万円 | 1/2 | 高 |
| ものづくり補助金 | 生産性向上、革新的サービス | 750万円~2,500万円 | 1/2~2/3 | 中~高 |
| IT導入補助金 | ITツール導入、業務効率化 | 5万円~450万円以下 | 1/2~2/3 | 中 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 販路開拓、生産性向上 | 50万円~200万円 | 2/3 | 中 |
補助金申請を税理士に頼む5つの大きなメリット(信頼性の証)
補助金の申請サポートを税理士に依頼することは、単に書類作りを代行してもらうだけではありません。専門家である税理士に頼む最大の利点は、申請の成功率を上げる「専門的な戦略」と、補助金を受け取った後の「税金や会計のリスクをなくす安心感」をセットで得られる点にあります。
メリット1:財務のプロだからできる!説得力のある事業計画の作成
補助金の審査では、計画書に書かれた目標数値や利益の見込みが本当に実現できるかを厳しくチェックされます。
税理士は、日々の帳簿づけや決算書作成を通じて、あなたの会社の「お金の状況」を最も深く知っている専門家です。この財務知識を活かし、過去の実績と将来の数字の予測に矛盾がない、論理的な事業計画を作ることができます。
これにより、計画書全体の説得力と、審査員に対する財務的な信頼性が格段に向上します。単なる希望ではなく、実現の根拠がある「裏付けされた計画」として提出できることが、採択の鍵を握ります。
メリット2:国の認定支援機関だから採択実績が高い
税理士の多くは、国から「経営革新等支援機関」(認定支援機関)の認定を受けています。
この認定は、国が定める一定レベル以上の専門知識と経験があることの証明であり、専門性・信頼性の裏付けです。特に事業再構築補助金のような大きな補助金では、この認定支援機関による事業計画の事前チェックと「確認書」の添付が必須とされています。
認定支援機関である税理士に依頼することは、これらの大規模な補助金に挑戦するための「必須条件」であると同時に、第三者の客観的な評価を得ることで、申請の信頼性を大きく高める決定的な要因となります。
メリット3:受給後の会計・税務処理まで一貫して安心
補助金は、事業が終わった後に実績報告を行い、その内容が承認されて初めてお金が支払われます。この実績報告では、補助金の対象になる経費とそうでない経費を厳密に分け、会計処理が正しいことを示す必要があります。
税理士は、申請前から経費の分類や管理方法について指導を行い、報告時の計算ミスや必要書類(レシートや請求書など)の不足といったリスクを最小限に抑えます。
さらに、報告業務と密接に関わる、受給後の税金(税務)処理(圧縮記帳や消費税の処理など)まで見据えた一貫したサポートを提供できるのが、税務の専門家である税理士の大きな強みです。
メリット4:面倒な事務作業から解放され、時間を大幅に節約できる
補助金の申請には、募集要項の確認、計画書の作成、たくさんの添付書類の準備、電子申請システム(Jグランツなど)の操作、審査中の問い合わせ対応など、非常に手間のかかる事務作業が伴います。
中小企業の経営者にとって、本業に集中すべき時間をこれらの事務作業に使うことは大きな損失です。税理士に依頼することで、面倒な書類作成や行政とのやり取りを代行してもらえるため、経営者は事業計画の実行と本業に専念することが可能になります。
メリット5:継続的な経営改善と資金繰りに組み込める
補助金の獲得は、一時的な資金調達で終わりではありません。会社の持続的な成長戦略の一部であるべきです。
税理士は、補助金で導入した設備投資が、将来的に会社の財務にどのような影響(減価償却費の増減、ランニングコスト、売上アップ効果など)を与えるかを正確に予測できます。
この予測に基づき、設備投資後の予期せぬ資金不足を防ぎ、戦略的な資金繰り計画に補助金を組み込むアドバイスをしてくれます。その結果、短期的な資金獲得を長期的な事業発展へと繋げることが可能です。
税理士と他の専門家(行政書士・社労士)の役割の違い
補助金の申請サポートには、税理士のほかに行政書士や社会保険労務士(社労士)といった専門家が関わることがありますが、それぞれが得意とする分野はハッキリと違います。
補助金サポートにおける各専門家の役割分担
どの専門家が適任かは、補助金の目的や申請内容によって変わります。
- 社会保険労務士(社労士):専門分野: 労働に関する法律や社会保険のプロです。役割: 主に厚生労働省が管轄する助成金(雇用、人材育成、労働環境の改善など)の申請代行に強みがあります。
- 行政書士:専門分野: 役所に提出する書類作成や手続き代行のプロです。役割: 許認可申請や、一部の補助金申請書類の作成を担当します。ただし、会社の財務分析や税金に関わる会計処理は専門外です。
- 税理士:専門分野: 財務、会計、税務のプロです。役割: 経済産業省系の補助金(設備投資や事業拡大を伴うもの)の申請において、事業計画の数値の根拠づくり、財務分析、そして受給後の税金対策(圧縮記帳)といった、会社の経営の土台に関わる最も重要な部分を担当します。
大規模な補助金で税理士が不可欠な理由
特に大きな補助金を申請する場合、税理士は、申請に必須な要件である「認定支援機関」の資格を持ち、会社の財務的な信頼性を国に対して証明する不可欠な存在となります。
大規模な設備投資を伴う補助金は、数年にわたる経営計画と複雑な税務処理が必要になります。そのため、申請前の資金計画から受給後の確定申告まで、すべて一貫して対応できる税理士が、資金調達全般における最適なパートナーだと言えます。
失敗しない税理士選び:補助金サポートのプロを見抜く判断基準
補助金申請の代行を依頼する際、一番大切なことは、その補助金に対する「実績」と、補助金を受け取った後に起きる「税金のリスク」を管理できる専門性を持っているかを見極めることです。
補助金サポートの実績と専門性(認定支援機関は必須)
税理士を選ぶときは、次の実績と専門性を重点的に確認しましょう。
- 具体的な採択実績の確認:過去にどのような申請を扱い、どんな成功事例があるのかを具体的に尋ねましょう。特に、あなたが挑戦する予定の補助金(例:ものづくり補助金やIT導入補助金など)について、成功事例や、どのような戦略で採択に繋がったのかを確認することが重要です。
- 認定支援機関であることの確認:依頼先が国の「認定支援機関」であるかどうかは必ず確認すべき事項です。認定支援機関であることは、一定レベル以上の専門知識を持っている証明であると同時に、特定の補助金を申請するための前提条件でもあります。
- ビジネス理解度の確認:成功事例を通じて、その税理士があなたの会社のビジネスモデルや業界特有の課題をどれだけ深く理解しているかを確認すべきです。深い理解があってこそ、説得力のある事業計画が作れます。
相談・面談で確認すべき具体的な質問リスト
契約後に予期せぬトラブルや追加の費用を防ぐため、以下の点を事前にリストアップし、書面で明確に確認することが強く推奨されます。
- 成功報酬の計算基準: 補助金をもらえた額の何パーセントで計算するのか?また、消費税抜きの金額か税込金額のどちらを基準にするのか?
- 着手金と追加費用の有無: 申請書の修正や実績報告書の作成が追加料金に含まれるのか?
- 採択後の税務相談の範囲: 補助金を受け取った後の税務処理(圧縮記帳や消費税の処理など)について、顧問契約の範囲内で対応してもらえるのか、それとも別途費用が発生するのか?
- 対応実績のある補助金の種類: 難易度の高い大規模な補助金(ものづくり補助金など)に対応できる経験があるか?
税理士の補助金サポート費用:相場と料金の仕組み
補助金サポートの費用は、依頼する税理士事務所の経験や、補助金の難しさ、契約の形(一時的な依頼か顧問契約か)によって大きく変わります。費用が妥当かどうかを正しく判断するためには、料金の仕組みを理解することが大切です。
着手金と成功報酬の一般的な相場と設定の理由
補助金サポートの報酬は、基本的に「着手金」と「成功報酬」を組み合わせて決まります。成功報酬とは、補助金の採択が決まり、実際にお金が交付されたタイミングで支払う費用です。
1. 成功報酬の相場
補助金額に対する成功報酬の割合は、補助金の規模や難しさによって変動します。
- 小〜中規模な補助金(持続化補助金など):補助金額の10%〜15%程度
- 大規模な補助金(ものづくり補助金など):補助金額の8%〜12%程度
- 特殊で難易度の高い補助金:補助金額の15%〜20%程度
2. 着手金の役割
着手金は、申請準備(事業計画の策定や面倒な事務作業)に最初にかかる労力とリスクをカバーするために設定されます。
もし着手金を設定しない場合、税理士側のリスクが高くなるため、その分成功報酬の割合が15%〜30%程度まで著しく高くなる傾向があります。
大規模な補助金ほど、事業計画を練り上げるのに専門家の高度な作業が必要となるため、成功報酬の総額は高額になります。しかし、もらえる金額が大きい(数千万円以上)ため、成功報酬の「率」(パーセンテージ)自体は低めに設定される傾向があるのです。
単発(スポット)と顧問契約の費用を比べる
補助金サポートの依頼方法が「単発(スポット)契約」か「顧問契約」かによっても、費用の相場は大きく変わります。
1. スポット契約(単発の依頼)
補助金申請を一度きりだけ依頼する契約です。
費用:着手金として5万円から20万円程度が発生します。成功報酬として、補助金額の8%から15%程度が支払われます。
2. 顧問契約(普段から依頼している場合)
すでに顧問税理士として契約している場合、税理士はあなたの会社の経営状況や財務内容を深く理解しています。
費用の優遇:この理解があることで、申請準備の手間が減り、単発(スポット)契約と比べて費用が優遇されるケースが多く見られます(着手金が安くなるか免除、成功報酬の割合が低くなるなど)。月額顧問料(3万円〜10万円程度)を支払っている場合、補助金申請の追加費用は、事務所によっては顧問料に含まれるか、スポット契約よりも低額に設定されるのが一般的です。
資金調達を継続的な経営戦略として考えるなら、顧問契約を活用する方が、長い目で見るとコストパフォーマンスが高くなります。また、会社の財務戦略を含めた総合的なアドバイスを受けやすいメリットもあります。
補助金申請サポート報酬相場の目安(2025年時点)
| 契約形態 | 着手金(税別) | 成功報酬(補助金額に対する割合) | 特徴・コスト効率 |
| スポット契約 | 5万円~20万円程度 | 8%~20%程度 | 単発依頼のため初期費用が発生しやすい。 |
| 顧問契約あり | 0円~10万円程度 | 8%~15%程度 | 継続的な関係性により、費用面で優遇されることが多い。 |
| 着手金なし | 0円 | 15%~30%程度 | 成功報酬の割合が著しく高くなる傾向がある 。 |
コストパフォーマンスを高める依頼方法と追加費用を防ぐ対策
コストパフォーマンスを高めるためには、報酬にどこまでの作業が含まれているのかをハッキリさせることが最も重要です。
申請書類の作成だけでなく、次の発生する可能性が高い追加の作業が報酬に含まれているかを必ず確認しましょう。
- 実績報告書の作成(補助金をもらうために必須の、費用報告の書類)
- 交付申請の手続き
- 申請書の修正への対応
特に実績報告は非常に手間がかかる作業です。これが別料金になると、最終的に支払う総コストが大きく増えるリスクがあります。
こうした包括的なサポートを顧問契約として依頼することで、トータルで見たコストとリスクをまとめて管理できるようになります。
専門家が教える!補助金を受け取った後の「税金戦略」(経営者が知るべきこと)
補助金を受け取った後の税金処理こそ、税理士の専門性が最も問われる部分であり、経営者が一番見落としがちなリスクです。受け取った資金を最大限に活かすためには、税法に基づいた適切な戦略と会計や税務処理が必須となります。
補助金は「会社の利益」となり税金がかかるのが原則
事業の拡大や設備投資のために受け取った補助金や助成金は、会社の利益(益金)として扱われるため、原則として税金がかかる対象です。
この結果、補助金を受け取った年に大きな利益が計上され、予想外に多額の税金が発生し、せっかくの資金が会社から流出するリスクがあります。
(※雇用関係の助成金の一部に税金がかからないものもありますが、大規模な補助金は基本的に課税対象です。)
法人税の負担を軽くする「圧縮記帳」:仕組みと活用法
補助金に税金がかかることで、最初の期の税負担が重くなるのを避けるため、税法上、「圧縮記帳」という特別なルールの適用が認められています。これは、税金がかかる時期を将来に延ばす(繰り延べる)ための、非常に強力な税金戦略です。
圧縮記帳とは?
補助金を使って特定の機械や建物などの固定資産を買った場合、その固定資産の購入金額から補助金相当額を差し引いて経理処理するなどの方法で、補助金を受け取った年の会社の利益を減らすことができます。
この処理を行うことで、補助金が利益として計上される年度の法人税の負担を軽減し、資金流出を抑えることができます。
圧縮記帳の戦略的な意味
圧縮記帳は、税金をかからないようにするのではなく、「課税を繰り延べる」(支払いを将来に延期する)措置である点を理解することが重要です。
- 初年度: 圧縮記帳で大きく税負担を減らし、手元の資金流出を防ぎます。
- 将来: その資産の減価償却費(費用)として認められる金額が減ることになります。
したがって、トータルで見た税負担額は変わりません。しかし、初年度の資金流出を大幅に抑え、その資金を運転資金やさらなる投資に活用できるという点で、会社の資金繰りを最適化する非常に強力な効果を発揮します。
見落としがちな「消費税」のルール:税額控除の落とし穴
補助金そのものには消費税はかかりません。しかし、補助金で買った経費に含まれる消費税(仕入税額)の扱いが複雑になるため、注意が必要です。
補助金に関わる仕入税額控除の原則
補助金で支払った経費にかかった消費税額は、「補助金に対応する分」として、原則として、消費税を計算する際の控除(差し引き)の対象外となる可能性があります。
この複雑な調整は、特に会社の課税売上の割合が95%未満で、かつ「個別対応方式」という方法で消費税の申告をしている場合に必ず必要になります。
複雑な計算と税務リスク
個別対応方式を選んでいる会社は、補助金の対象となった経費を、次の3つのうちどれに当たるかを細かく分けて、複雑な計算をしなければなりません。
- 消費税がかかる売上にだけ必要な経費
- 消費税がかからない売上にだけ必要な経費
- 両方の売上に共通して必要な経費
特に「共通して必要な経費」の場合、消費税の控除額を出すために課税売上の割合をかけるなどの調整が求められます。
この計算を間違えると、不適切な控除となり、税務調査の際に追加で税金を払うことになったり、ペナルティ(加算税)の対象となる重大なリスクを負います。この高度な判断と計算は、税理士の専門知識がなければ非常に難しいものです。
補助金受給に関する税務・会計処理の比較
| 処理項目 | 税務上の原則 | 税理士による対応(専門的戦略) | 法令・根拠 |
| 法人税/所得税 | 収益(益金)として全額課税対象 | 圧縮記帳を適用し、課税を繰り延べ、初年度の納税負担を軽減。 | 法人税法 第42条 |
| 消費税(仕入側) | 補助対象経費の仕入税額控除に調整が必要となる場合がある。 | 課税売上割合に基づき、仕入控除税額を正確に計算し、コンプライアンスリスクを回避。 | 消費税法(関連通達含む) |
補助金申請を成功させるための具体的なステップと大切な注意点
申請準備から補助金をもらうまでの全体的な流れ
補助金申請のプロセスは、「制度選び」から始まり、「事業計画の作成」「申請書の提出」「審査」「採択決定」「交付申請」「事業の実行」「実績報告」、そして最後に「補助金の支給」という厳密な流れで進みます。
このプロセスで成功するカギは、決められた事業期間をしっかり守ることと、行政(国や自治体)と密に連絡を取ることです。
事業期間を厳守することとお金の処理のタイミング
補助金の対象となる経費は、原則として決められた事業期間内に発生し、支払いが終わったものに限られます。
この期間外に発注したり、支払いを行ったりした場合、たとえ事業に不可欠な経費であっても補助金の対象外になってしまいます。そのため、税理士と協力して、事業計画の実行スケジュールと経理処理のタイミングを厳しく管理することが必須です。
最近の補助金では、Jグランツなどのオンラインシステムを使った申請が中心です。これらの手続きに慣れている専門家のサポートを受けることで、効率が格段に上がります。
不正受給やルール違反を避けるための法的注意点
補助金制度の信頼性を守るため、行政側は不正受給や募集要領の違反に対して厳しい姿勢をとっています。
公募要領の厳守と嘘の申請の回避
申請書類や事業計画が、募集要領の内容と少しでも違っていた場合、採択されないだけでなく、悪質なケースでは不正受給と判断され、補助金全額の返還や、ペナルティ(加算金)、さらには刑事罰の対象となる可能性があります。
事業再構築補助金などでは、目的外の使用や嘘の申請に対する罰則が厳しく決められています。
まとめ:補助金活用は、「申請」から「受給後の税務」までの一貫した戦略が鍵
補助金申請において、税理士の役割は単なる書類作成ではありません。
公募要領の複雑なルールを正確に理解し、意図しないミスや不正受給のリスクを未然に防ぐこと。これが、経営者の皆様が法的な不安を感じることなく、安心して本業に専念するための、強固な基盤となります。
そして、真のゴールは「採択」ではなく、その資金を活かして「事業を成長させること」にあります。
私たちほまれ税理士法人は、単なる申請代行にとどまらず、お客様のビジョンを実現するための「経営のパートナー」でありたいと考えています。
事業計画のブラッシュアップによる採択率の向上はもちろん、補助金を受け取った後の財務の健全化まで、責任を持ってサポートいたします。
「採択されるか不安だ」「受給後の資金繰りや税金が心配だ」
そのようなお悩みを抱えている経営者様は、ぜひ一度、ほまれ税理士法人にご相談ください。
貴社の状況を丁寧にヒアリングし、資金調達から税務対策まで最適な解決策を共に考えさせていただきます。初回のご相談は無料ですので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

