【はじめに】その「別れ」は、未来への「新しい出会い」
こんにちは!税理士の井上です。
「今の先生には感謝してるんです。でも会社のステージが変わってきて…」
そんな風に、経営者の方から税理士変更のご相談を受けることがあります。
そんな時、私はいつも「それはあなたの会社が順調に成長している何よりの証拠ですよ」とお伝えしています。
会社の経営において税理士は単に書類を作るだけでなく、事業の成長を一緒に支える大切なパートナーです。
しかし会社の状況が変わるにつれて、求めるサポートの内容も変わってきます。「最近、節税の提案がないな」「経営の相談がしにくいかも…」といった小さな違和感は、パートナーシップを見直すタイミングなのかもしれません。
税理士の変更は、決してネガティブなことではありません。しかし、「今の税理士との関係が悪くならないか」「引き継ぎは大丈夫か」「手続きが面倒で本業に影響しないか」といった不安を感じる方も多いでしょう。
この記事では税理士の立場から、税理士変更のステップを分かりやすく解説します。変更を考えるべきサインから、トラブルを防ぐための具体的な手順、そして困ったときの対処法まで。
最後まで読めば、あなたは不安なく会社の未来を加速させる新しいパートナーと出会うための一歩を踏み出せるはずです。
もしかして当てはまる?税理士変更を考えるべき4つのサイン
今の顧問税理士になんとなく不満を感じていても、「本当に変えるべきか?」と迷うことは多いですよね。
ここでは、税理士の変更を具体的に考えた方が良いかもしれない4つの「危険信号」について解説します。もし多く当てはまるものがあれば、それは関係を見直す時期かもしれません。
1. 連絡が遅い・返事がない
質問のメールを送っても数日返事がなかったり、電話をしても折り返しがなかったり。 これでは、ビジネスのスピードが落ちてしまいます。補助金の締め切りや融資の判断など、すぐに決めたい場面で返事が遅れると、チャンスを逃すことにも繋がりかねません。スムーズな連絡は、信頼関係の基本です。
2. 節税や経営改善の「提案」がない
ただ申告書を作るだけでなく、会社の状況を理解し節税策や資金繰りの改善策などを積極的に提案してくれるのが良いパートナーです。 毎月、過去の数字の報告だけで未来に向けた具体的なアドバイスが全くなければ、その税理士はあなたの会社の成長を助けているとは言えないでしょう。
3. 払っている「顧問料」とサービス内容が合っていない気がする
顧問料は決して安い金額ではありません。払っている金額に対して見合ったサービスが提供されているか、時々見直す必要があります。 「顧問料でどこまでやってくれるのかハッキリしない」「簡単な相談でもすぐに追加料金を請求される」といった不満は、料金とサービス内容がミスマッチを起こしているサインです。
4. 税務調査のときに頼りにならない
税務調査は、会社にとって非常に重要な局面です。その時に、税務署の指摘に対して適切な説明や主張ができず、一方的に受け入れてしまうようでは会社を守れません。
調査官と対等な立場で対話しあなたの正当な権利を守ってくれる交渉力と専門知識は、税理士にとって不可欠なスキルです。
【トラブル回避】税理士の引き継ぎを円満に進める5つのステップ
税理士の変更を決めたら、次に行うべきは円満で確実な「引き継ぎ」の計画です。感情的に進めるとデータの引き渡しを拒まれるなどのトラブルになりかねません。
ここではリスクを最小限に抑え、スムーズに移行するための5つのステップを具体的に解説します。
Step 1:今の契約内容をよく確認する
動き出す前に、今の税理士との契約書を隅々まで確認しましょう。
- いつまでに解約を伝えればいい?(解約予告期間)
- どうやって伝える?(書面か、口頭か)
- お金の精算は、どうなる?(契約終了月の顧問料など)
- 預けている資料は、ちゃんと返してくれる?
これらを事前に確認しておかないと、後から「話が違う!」となる可能性があります。
Step 2:引き継ぎに必要な「資料リスト」を作り返却をお願いする
円満な引き継ぎのコツは、解約を伝える前に必要な資料を全て手元に戻しておくことです。
関係が悪くなってからでは、「資料をなかなか返してくれない…」といった事態も起こりかねません。
「会社のデータ管理のために過去の資料一式をバックアップしたいのですが…」など、相手を刺激しない自然な理由で資料の提供をお願いするのが賢明です。
【最低限、これだけは回収したい!資料チェックリスト】
- 過去3期分の申告書・決算書
- 設立以降の、税務署への各種届出書
- 過去3期分の総勘定元帳
- 預けている領収書や請求書など
- 給与台帳など
これらの資料はあなたの会社の財産です。もし返却を渋られても法律上、返してもらう権利があります。
Step 3:【重要】次の税理士を「先に」見つけて仮契約を結ぶ
今の税理士に「解約します」と伝える前に、必ず次の税理士を見つけて「引き継ぎをお願いします」という約束(仮契約)を取り付けておきましょう。
先にやめてしまうと、税理士がいない「空白期間」が生まれ、申告漏れなどのリスクがあり危険です。
探し方のポイント
知り合いの紹介、税理士紹介サービス、ネット検索など方法は様々です。大切なのはあなたの会社の今の状況と未来の目標に合った専門家を選ぶことです。
面談で聞くべきこと
候補が見つかったら、必ず面談を。「得意な業種は?」「どんな提案をしてくれますか?」「料金体系は?」など気になることは全て質問しましょう。
Step 4:今の税理士へ「やめること」を丁寧に伝える
新しい税理士の目処がつき資料も手元に戻ってきたら、いよいよ解約を伝えます。ここでの伝え方次第で最後の引き継ぎ協力が変わってきます。
- タイミング:決算・申告が終わった直後がベストです。
- 伝え方:まずは電話などで感謝を伝え、その後、メールなどの書面で正式に通知し、記録を残します。
- 理由の伝え方(例文):「親戚が税理士事務所を開業しまして…」「取引先から、税理士の変更を強く勧められまして…」「会社のステージが変わり、〇〇分野に強い先生を探すことになりまして…」 など、相手を責めずに、感謝と共に伝えるのが、円満な別れ方のコツです。
Step 5:新しい税理士へスムーズに「引き継ぎ」を行う
税理士同士が、直接やり取りすることは稀です。あなたが両者の「橋渡し役」となります。
あなたが前の税理士から受け取った資料を新しい税理士に渡して、新しい税理士から「前の先生にこれを確認してほしい」と頼まれたら、あなたが間に立って伝えてください。
手間はかかりますが、この最後のステップを丁寧に行うことで新しい税理士は安心して仕事を始められ、結果的にあなたの会社のためになります。

【あなたの権利】税理士が法律で守るべき、2つの「大切な約束」
税理士を変更するとき、「前の税理士に何か不利なことをされないだろうか…」と不安に感じるかもしれません。
でも大丈夫です。法律は依頼者であるあなたの権利を強く守っています。特にこれから説明する2つの「約束」は、税理士に課せられた法律上の義務です。この知識があなたを不当な扱いから守る力になります。
約束①:あなたの会社の「秘密」は絶対に守ります(守秘義務)
税理士には、法律(税理士法)によって「秘密を守る義務(守秘義務)」が課せられています。
【法律の条文(要約)】
第38条:税理士は仕事で知った秘密を、正当な理由なく漏らしてはいけない。税理士をやめた後も同じ。
第54条:税理士事務所で働くスタッフ(従業員)も同じ義務を負う。
【ポイント解説】
何が「秘密」? → 会社の売上や利益、社長個人の相談内容など仕事を通じて知った全ての情報です。
いつまで守る? → 契約が終わった後も永久に守り続けます。
誰が守る? → 税理士本人だけでなく事務所のスタッフ全員です。
たとえ、あなたが税理士との契約をやめる時にもめたとしても、前の税理士が腹いせにあなたの会社の情報を誰かに漏らすことは絶対に許されない法律違反です。もし違反すれば、その税理士は資格を失ったり罰金や懲役といった刑事罰の対象にもなります。
約束②:預けた「資料」は必ず返します(資料返還義務)
税理士に預けている申告書の控えや領収書などの資料は全て、あなたの会社の所有物です。
税理士が作った書類であっても、その元になったデータや依頼に基づいて作られた成果物(申告書など)はあなたに返す義務があります。これは税理士会のルールでもハッキリと定められています。
資料はあなたの会社のものですので、堂々と返却を求める正当な権利があることを覚えておいてください。
【ケース別】税理士の引き継ぎで、よくあるトラブルと対処法
どんなに注意していても残念ながら、税理士の変更時にトラブルが起きてしまうこともあります。
しかし事前に「もしも」の時の対処法を知っておけば、落ち着いて対応できます。代表的な3つのトラブルと、その解決ステップを見ていきましょう。
ケース1:「資料を返さない」と、妨害されたら?
これは、あってはならない非常に悪質なケースです。しかし泣き寝入りする必要はありません。
ステップ①:内容証明郵便で、「返してください」と正式に要求する
「いつ、誰が、誰に、何を要求したか」を公的に証明できる「内容証明郵便」を使って、返してほしい資料のリストを送りましょう。
ステップ②:その税理士が所属する「税理士会」に相談する
税理士会は、税理士を監督する立場にあります。相談すれば税理士会から本人へ指導などが行われ、解決することが多いです。
ステップ③:法テラスや弁護士に相談する
それでも解決しない場合は、最終手段として法律の専門家(弁護士など)に相談し、法的な手続きを考えます。
ケース2:「高額な解約金」や、身に覚えのない料金を請求されたら?
解約を伝えた途端、契約書にない高額な違約金などを請求されるケースです。
まずは契約書を再確認して「契約書に、そんなこと書いてないですよね?」と冷静に請求の根拠を相手に説明してもらいましょう。
それでも納得できない請求が続く場合は「税理士会」への相談が有効です。
ケース3:引き継ぎに「協力してくれない」場合は?
資料は返してくれたけど、新しい税理士からの質問には答えてくれない…といった、非協力的な態度を取られるケースです。
残念ながら、協力をお願いする法的な強制力はありません。しかし、事前に必要な資料さえ回収できていれば大きな問題にはなりません。
優秀な新しい税理士なら、資料から会社の状況を読み解き仕事を進めてくれるはずです。
失敗しない!事業を成長させる「良い税理士」を見極める5つのポイント
せっかく税理士を変えるなら、次は絶対に失敗したくないですよね。あなたの会社の成長を、本当にサポートしてくれる「良い税理士」を見極めるための、5つのポイントをご紹介します。
- 専門性と実績 → あなたの業界に詳しいか。会社の未来の課題(事業承継など)に対応できるか。
- コミュニケーション能力と相性 → 分かりやすく説明してくれるか。話しやすいと感じるか。
- 料金体系の透明性 → 何が含まれて、何が別料金か、ハッキリしているか。
- 経営への「貢献したい」という意欲 → ただ書類を作るだけでなく、会社の未来を一緒に考えてくれる姿勢があるか。
まとめ:その決断を、会社の未来への「新しいスタート」に
税理士の変更は、少し気を使う手間のかかる作業かもしれません。
しかし、この記事でお伝えしたポイントを押さえればトラブルなく、円満に、そしてスムーズに引き継ぎを終えることができます。
最後に大切なポイントをもう一度、確認しましょう。
- 冷静に、計画的に感情的にならず、契約書の確認から資料の事前回収、新しい税理士選びまで順番に進めることが成功の鍵です。
- あなたは守られている税理士にはあなたの秘密と資料を守る法律上の重い義務があることを忘れないでください。
- 「ありがとう」を忘れずに解約を伝える時はこれまでの感謝の気持ちを伝えることが、円満な別れ方のコツです。
- 未来を見据えて選ぶ新しい税理士は、料金だけでなくあなたの会社の成長を本当に応援してくれるパートナーか、という視点で選びましょう。
税理士の変更はあなたの会社の未来を決める、大切な経営判断です。もし、今のパートナーに少しでも疑問を感じているなら、それは行動を起こす良いタイミングなのかもしれません。
「どうやって円満に今の税理士に伝えればいいだろう…」 「引き継ぎで失敗しないか不安だ…」 「次は、失敗したくない…」
もしあなたが今、そんな風に一人で悩んでいらっしゃるならほまれ税理士法人までご連絡ください。

