法人の設立と個人の開業の違いとは?「法人」と「個人事業主」の比較

こんにちは!税理士の井上です。

これからビジネスを始めようという時、法人と個人どちらで始めるべきか迷った経験はありませんか?

事業形態の選択は、単に手続きの複雑さや初期費用に影響するだけではありません。
将来の税負担、世間からの信用度、資金調達のしやすさ、さらには事業承継(事業を次世代に引き継ぐこと)に至るまで、あなたのビジネスの未来を左右します。

本記事では、法人の「設立」と個人の「開業」の根本的な違いから、法人と個人事業主それぞれのメリット・デメリットを分かりやすく解説します。
この記事を最後までお読みいただければ、あなたの事業計画にぴったりな選択肢が分かり、自信を持ってビジネスの第一歩を踏み出すことができるはずです。

関連記事:【税理士が解説】会社設立の法的な流れと、失敗しないための重要ポイント |ほまれ税理士法人

目次

「設立」と「開業」の基本的な違いとは?

事業を始める際によく使う「設立」と「開業」ですが、これらの言葉は法律上も実務上もはっきりと区別されています。まずは、この基本的な言葉の定義を理解しましょう。

「設立」とは:法人格を取得する法律行為

「設立」とは、法務局に登記申請を行い、法律に基づいて会社(法人)を誕生させる一連の法的な手続きを指します。これは法律(特に会社法)に定められた行為であり、個人事業主には当てはまりません。

この手続きを経て、会社は「法人格」を取得します。

法人格とは、法律によって私たち個人と同じように、権利や義務の主体となることを認められた「地位」のことです。法人格を得ることで、会社は自分の名義で契約を結んだり、財産を所有したり、銀行口座を開設したりすることができるようになります。

法務局に設立登記申請書を提出し、それが受理された日が「会社設立日」として登記簿に記載されます。この設立日こそが、法人税の計算期間の開始日となるなど、法務・税務上のすべてのスタート地点となる重要な日付です。

「設立」は、単に組織を作るだけでなく、社会的に独立した存在として法的に認められた「人格」を新たに創り出す行為です。この「法人格の取得」こそが、後で解説する個人事業主とのあらゆる違いを生み出す根源となっています。

「開業」とは:新しく事業や商売を始めることを指す言葉

「開業」は事業の法的な形(会社か個人か)とは関係ありませんが、個人が事業を開始することを指す言葉として主に使用されます。

「設立」にあるように、別人格として事業をスタートするわけではありませんので、「今日から事業を始める」と決め、実際に何らかの事業活動を始めれば、それが事業の開始日になります。個人の開業届の提出は、事業開始日から一ヶ月以内と定められているため、あわてて書類を作る必要はありません。個人として事業活動を開始すれば、それが開業となります。

言葉の定義を理解したところで、次はいよいよ実践的な比較に入ります。「法人を設立する」のか、それとも「個人事業主として開業する」のか。この二つの選択肢について、手続き、費用、期間の観点から具体的に見ていきましょう。

手続き・費用・期間の比較|設立と開業の手順

設立・開業の手順

株式会社を設立する場合、会社法に定められた手順を踏む必要があります。これは、社会に対して独立した法人格(有限責任を持つ)を創り出すための、重要なプロセスです。

(1)会社設立のステップ(株式会社の例)

①発起人の決定: 会社の設立を計画し、実行する中心人物を決めます。発起人は、必ず設立時に株式を1株以上引き受ける義務があります。

②会社概要の決定: 商号(会社名)、本店所在地、事業の目的、資本金の額、役員の構成など、会社の最も基本的な事項を決定します。

③定款の作成・認証: 会社の根本的なルールである「定款」を作成します。株式会社の場合、作成した定款は公証役場公証人の認証を受けなければなりません。

④資本金の払込み: 発起人が定めた銀行口座に、決定した資本金を実際に払い込みます。

⑤登記申請書類の作成・提出: 設立登記申請書、定款、資本金の払込証明書など、必要な書類をすべて揃え、本店所在地を管轄する法務局に提出します。

関連記事:【税理士が徹底解説】会社設立の必要書類ガイド|登記から税務手続きまで |ほまれ税理士法人

(2)設立後の重要手続き

登記申請が完了して初めて、法的に会社が誕生します。しかし、手続きはこれで終わりではありません。

会社ができてから2ヶ月以内に、税務署、都道府県税事務所、市区町村役場へ「法人設立届出書」を、税務署へ「青色申告の承認申請書」、「給与支払事務所等の開設届出書」などを提出する必要があります。

個人事業主(開業)の手順

一方、個人事業主として事業を始める手続きはシンプルです。会社(法人)のように複雑な法律の手続きは必要なく、基本的には税務署への届出が中心となります。

開業のステップ

事業をスタートした日から1ヶ月以内に、管轄する税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」「所得税の青色申告承認申請書」「給与支払事務所等の開設届出書」などを提出する必要があります。

法人との本質的な違い

個人事業主の開業は、法人設立が「新しい会社という人格を作る」という法的な行為であるのに対し、「個人が事業で収入を得ることを税務署に知らせる」という税務上の手続きである点が本質的に異なります。

この違いこそが、手続きが簡単であることにつながっているのです。

初期費用と設立までにかかる期間の比較

手続きの複雑さと同じく、事業開始までに必要な初期費用時間も、法人と個人事業主とでは違いがあります。

法人設立(株式会社)の初期費用と期間

株式会社を設立する場合、国や公証役場に必ず支払う「法定費用」だけで、最低でも約20万円以上が必要です。

主な法定費用

  • 登録免許税:最低でも15万円
  • 定款認証手数料:約3万円〜5万円
  • 定款用収入印紙代:4万円(※電子定款にすれば不要)
  • 定款謄本手数料:約2,000円

これに加えて、会社の実印を作る費用や、司法書士などに依頼する場合の報酬もかかります。期間も、準備から登記が完了するまで、通常2〜3週間程度は見ておく必要があります。

個人事業主(開業)の初期費用と期間

一方、個人事業主の開業には、国に支払う法定費用は一切かかりません。「開業届」の提出は無料です。

書類さえ準備すれば、最短1日で手続きを完了させることも可能です。

この初期コストとスピード感の違いは、特に自己資金が限られるスモールスタートの創業者にとって、重要な判断材料となるでしょう。

法人設立と個人事業主開業の初期手続き・費用・期間 比較表

項目株式会社(法人設立)個人事業主(開業)
主な手続き定款作成・認証、資本金払込、法務局へ設立登記申請、税務署へ「設立届」等提出税務署へ「開業届」等提出
根拠法会社法、商業登記法、法人税法など所得税法
提出先公証役場、法務局、税務署、都道府県、市区町村税務署
法定費用(目安)約20万円~25万円0円
設立/開業までの期間2~3週間程度最短1日 

関連記事:会社設立の費用はいくら?株式会社・合同会社の全コスト比較と賢い節約術  |ほまれ税理士法人

税理士が解説!税金面での違い

事業形態を選ぶ上で、重要な判断基準の一つが「税金」です。会社(法人)と個人事業主では、かかる税金の種類、税率の構造、経費として認められる範囲などが全く異なります。ここでは、税理士の専門的な視点から、その違いを詳しく解説します。

(1)課される税金の種類と納税の基本

まず、事業で得た利益に対してかかる税金の種類が違います。

  • 法人:「法人税」(国税)、「法人住民税」「法人事業税」(地方税)
  • 個人事業主:「所得税」(国税)、「住民税」「個人事業税」(地方税)

ここで特に注意すべきは、法人の「法人住民税」です。

法人住民税は、利益に応じてかかる部分と、資本金や従業員数に応じて定額でかかる「均等割」で構成されています。

この均等割があるため、法人はたとえ事業が赤字であっても最低でも年間約7万円の納税義務が発生します。

これは、利益が出なければ税金がかからない個人事業主との大きな違いです。会社設立当初の資金繰り(キャッシュフロー)計画において、この「赤字でも払う税金」を見落とさないことが、重要なポイントとなります。

(2)大きな違い!法人税 と 所得税の税率構造

会社(法人)と個人事業主の税負担を比較する上で大きな違いが、法人税と所得税の税率構造にあります。

所得税:所得が上がるほど税率も上がる「累進課税」

所得税は、あなたの所得が高くなるほど税率も段階的に上がっていく「累進課税」が採用されています。税率は最低5%から最大45%までの7段階に分かれています。

法人税:原則「比例税率」、中小企業には軽減措置あり

一方、法人税の税率は、原則として23.2%の一定の割合(比例税率)です。

ただし、資本金1億円以下の中小法人には特別な措置があり、所得のうち年800万円以下の部分については15%の軽減税率が適用されます。この15%の軽減税率は、現在も適用が延長されています。

専門家が示す「800万円の壁」

この税率構造の違いから、一般的に「課税所得が800万円を超えると、法人化した方が税制上有利になる」と言われます。

所得が低い間は、個人事業主の所得税率の方が低いですが、所得が増加するにつれて累進課税の負担が重くなり、ある時点で法人の税率(15%→23.2%)を上回るためです。

この「800万円」という数字は、個人事業主が法人化を検討する上で、とても重要な目安となります。

(3)経費にできる範囲の違い

税金の額は「所得 × 税率」で計算されますが、その「所得」を減らすために差し引くことができる経費の範囲にも、大きな違いがあります。

経営者自身への給与の扱い

1. 個人事業主の場合

自分自身に給与を支払う概念はありません。事業で得た利益のすべてが、そのまま個人の所得となり、所得税の計算対象になります。

2. 法人の場合

経営者(役員)への給与を経費(損金)にできます。

会社が経営者に支払う給与、すなわち役員報酬は、会社の経費として扱われます。これにより、会社の利益を圧縮し、法人税の負担を減らすことができます。

法人化で可能になる「節税戦略」

役員報酬を受け取った経営者個人には所得税がかかりますが、「給与所得控除」という優遇措置が受けられます。この仕組みにより、利益を会社と個人に分散させることで、トータルでの税負担を軽くすることが可能になります。これは、個人事業主にはない法人ならではのメリットです。

その他にも、経営者にかける生命保険料や、自宅を社宅として借り上げる際の家賃の一部などを会社の経費にできるなど、法人の方が経費として認められる範囲が広い傾向にあります。

(4)事業が赤字になったら?赤字の繰越期間を比較

青色申告承認申請書を提出しており、事業が赤字になった場合、その赤字額(欠損金)を翌年以降の黒字と相殺して税金を減らせる「欠損金の繰越控除」という制度があります。この繰り越しが認められる期間が、法人と個人事業主では大きく異なります。

  • 法人:欠損金を最大10年間繰り越すことが可能。
  • 個人事業主:欠損金を最大3年間繰り越すことが可能。

特に、創業初期に多額の先行投資が必要で、数年間は赤字が続く可能性のあるビジネスモデルの場合、この7年間の差は非常に大きな意味を持ちます。

法人の10年という長い繰越期間は、事業が軌道に乗るまでの財務的な安定性を高め、リスクの高い挑戦を後押しするセーフティーネットとなります。

法人税と所得税の税率構造と主要な税制優遇の比較(2025年9月時点)

項目法人(中小法人)個人事業主
適用される主な税金法人税、法人住民税、法人事業税所得税、住民税、個人事業税
利益(所得)への税率・年800万円以下:15% ・年800万円超:23.2%5%~45%の累進課税
経営者本人への給与役員報酬として法人の経費(損金)に算入可能経費にできない(利益全体が所得)
赤字(欠損金)の繰越10年間3年間
赤字の場合の納税法人住民税均等割(最低年7万円)発生しない

社会保険・信用力・資金調達の比較

事業形態の選択は、税金だけの問題ではありません。社会保険の加入義務世間からの信用力、そして資金調達といった、経営に関わる要素にも大きな影響を及ぼします。

社会保険の「保障」と「コスト」の違い

社会保険への加入は、法人と個人事業主で明確な違いが現れる点の一つです。この違いは、保障・福利厚生面コスト面の二つの側面から考える必要があります。

加入義務と保険料の比較表

項目法人の場合(株式会社など)個人事業主の場合
加入義務法律で健康保険(協会けんぽ等)・厚生年金保険への加入が義務(社長一人でも必須)原則として国民年金・国民健康保険に加入
保険料負担会社と個人で半分ずつ(折半)負担する全額自己負担
将来の保障厚生年金で年金が手厚くなる国民年金のみ
従業員の扱い要件を満たした従業員を必ず社会保険に加入させる必要がある従業員が常時5人未満なら、就業時間等の要件に関わらず加入義務はない
①保障と福利厚生面(法人メリット)

年金:厚生年金は、国民年金に上乗せされる2階建ての制度であり、将来受け取れる年金額が手厚くなります

保障:健康保険には傷病手当金などの給付制度があり、保障が充実しています。

社会保険への加入は、法人にとっては「義務とコスト増」であると同時に、経営者自身の老後の安心や、優秀な人材を惹きつけるための福利厚生という側面も持っているのです。

②コスト面(法人デメリット)

法人の場合、会社が負担する社会保険料は決して小さくありません。これが固定費となり、経営を圧迫する要因にもなり得ます。

信用力と資金調達:「法人」が有利な2つの理由

事業の成功は、税金だけでなく、社会的な信用お金の集めやすさにも大きく左右されます。ここでは、なぜ法人の方が有利になるのかを解説します。

1. 社会的信用力:取引先や銀行に「安心感」を与える仕組み

一般的に、法人(株式会社など)は個人事業主よりも社会的信用が高いとされます。これはイメージではなく、法律に基づく構造的な違いから生まれています。

法人が信用される理由

  • 公的な証明と透明性 設立登記により、会社が公的に存在することが証明されます。会社名、住所、資本金などの重要な情報は公開され、誰でも確認できます。この情報がオープンであることが、安心につながります。
  • 会計ルール 法人は、ルールに従った会計処理を行う必要があります。このルールに沿った経営が、取引先や銀行からの信頼につながります。

その結果、法人の方が以下のような場面で有利になります。

  • 大企業との取引:取引口座の開設や契約の審査がスムーズに進みやすい。
  • 銀行融資:金融機関からの融資審査で有利になる傾向がある。

2. 資金調達の選択肢:返済不要な「出資」が可能に

出資」で集めたお金は、返済義務のない会社の自己資本になります。借金ではないため、返済のプレッシャーがなく、事業拡大を目指す上で強力な資金調達の選択肢となります。

【ポイント】 信用力や資金調達を重視するなら、設立の手間やコストがかかっても、法人を選ぶメリットが大きいと言えます。

関連記事:起業の資金、最低いくら必要? 知っておきたい目安と調達のコツ  |ほまれ税理士法人

万が一の責任範囲:財産を守れるか?

事業がうまくいかず、借金(負債)を抱えてしまった場合の責任の範囲は、法人と個人事業主で異なります。ここは、事業形態を選ぶ上で重要なポイントの一つです。

有限責任 or 無限責任

項目法人(有限責任)個人事業主(無限責任)
負債への対処経営者(出資者)の責任は、原則として出資した金額の範囲内に限定されます。事業上の借金は、経営者個人の借金とみなされます。
個人資産会社が倒産しても、原則として経営者個人の財産(自宅や貯金など)が差し押さえられることはありません。負債の全額に対して、個人資産のすべてをもって返済する義務があります。
【注意点】連帯保証のリスク

法人は原則「有限責任」ですが、注意が必要です。

中小企業が銀行などから融資を受ける際、 経営者個人が会社の借金の連帯保証人になるよう求められるケースが少なくありません。

この「経営者保証」をつけてしまうと、会社が倒産したときには、連帯保証人として個人資産で会社の負債を支払う義務が生じます。

つまり、実質的には有限責任のメリットが失われ、無限責任に近い状態になってしまいます。融資の契約を結ぶ際は、連帯保証の有無を必ず確認しましょう。

事業承継のスムーズさ:「法人」は引き継ぎが簡単

将来、事業を次の世代に引き継ぐ事業承継の際のプロセスにも、法人と個人事業主で大きな違いがあります。事業の永続的な発展を目指すなら、重要なポイントです。

「会社」という器を渡すだけ vs. 全資産を一つひとつ移す

1. 法人の場合:株式を渡すだけ

法人の事業承継は非常にシンプルです。

  • 引き継ぎ方法: 会社の株式を、後継者に譲渡(贈与や売買)するだけで完了します。
  • スムーズな理由: 会社という「器(法人格)」はそのまま存続します。そのため、会社の資産、借金、契約、許認可などがすべて一体として後継者に引き継がれます。
  • メリット: 手続きが簡単で、事業を止める必要がありません。

2. 個人事業主の場合:手続きが煩雑になりがち

個人事業主には、「会社」という独立した器(法人格)がありません。

  • 引き継ぎ方法: 事業用の資産(不動産、機械、車両など)は、すべて事業主個人の持ち物です。これらを一つひとつ後継者に移転する手続きが必要です。
  • 行政手続き: 先代は「廃業届」を、後継者は「開業届」をそれぞれ税務署に提出する必要があります。

事業を永続させるための仕組み

法人は、創業者個人の存在を超えて、事業そのものが存続し続けるための仕組みと言えます。事業を一つのまとまった財産としてスムーズに次世代に渡し、発展させていきたいと考えるなら、法人格を持つことは大きな強みとなります。

法人化を検討すべき3つのタイミング

ここまで、法人個人事業主の違いを詳しく見てきました。現在個人事業主として活動している方の中には、「法人化」を考え始めた方もいるかもしれません。

ここでは、具体的にどのようなタイミングで法人化を検討すべきか、3つの視点から解説します。

①所得800万円超えが最初の検討ライン

法人税と所得税の税率構造についての部分で解説した通り、最も分かりやすい判断基準は、税負担の分岐点です。個人事業の課税所得が恒常的に800万円を超えるようであれば、法人化を真剣に検討しましょう。

②消費税の「免税」期間を活用する 

消費税の納税義務も、法人化を考える上で重要な要素です。

個人事業主は、課税売上高が1,000万円を超えた場合、その2年後から消費税を納める「課税事業者」になります。

しかし、資本金1,000万円未満新しく法人を設立すると、原則として設立から最大2事業年度消費税の納税が免除されます。

つまり、個人事業主として消費税を納めることになったタイミングで法人化すると、再び免税事業者としての期間を享受できる可能性があります。

【注意点】インボイス制度の影響を必ず確認!

2023年10月から始まったインボイス制度には注意が必要です。

あなたの取引先が、消費税の仕入れ税額控除のために適格請求書(インボイス)の発行を求めてきた場合、あなたが免税事業者であっても「課税事業者」として登録しなければいけなくなるかもしれません。

このインボイスの登録をしてしまうと、この免税期間のメリットは享受できません。そのため、法人化による消費税のメリットを考える際は、自社の取引先がインボイスを求めてくるかどうかを慎重に判断する必要があります。

③事業拡大・資金調達・人材採用を見据える時

税金だけでなく、事業を大きく成長させるための戦略から、法人化のタイミングを判断することも重要です。
大規模な資金調達優秀な人材の確保を目指すとき、社会的な信用が高い法人格が有利に働く場合があります。

1. 大規模な資金調達の実現

  • 高額な融資: 銀行などの金融機関から高額な融資を受けたい場合、法人である方が審査で有利になります。
  • 投資家からの出資: ベンチャーキャピタル(投資会社)から出資を受ける場合、法人格を持っていることが前提となります。

2. 大企業との取引拡大(BtoB)

大企業を取引先として開拓していく場合、契約のルールの観点から、法人でなければ契約を結べないケースが多くあります。取引先の幅を広げるためには、法人が有利です。

3. 優秀な人材の採用

事業の成長に不可欠な優秀な人材を確保する上で、社会保険完備という福利厚生は重要なアピールポイントになります。求職者にとって、法人であることは「安心できる会社」という判断材料になり、採用競争において有利に働く可能性があります。

これらの戦略的な目標が現実的に見えてきた時こそが、法人化へと舵を切る絶好のタイミングと言えるでしょう。

法人化のメリット・デメリット総まとめ

最後に、法人化のメリットとデメリットを一覧で確認しましょう。

〈メリット〉

  • 税負担の軽減:所得税の累進課税を回避し、役員報酬の活用で税負担を最適化できる。
  • 社会的信用の向上:金融機関や取引先からの信用が高まり、ビジネスチャンスが拡大する。
  • 有限責任:事業上のリスクから個人資産を保護できる。
  • 資金調達の多様化:融資に加えて、株式発行による出資が可能になる。
  • 事業承継の円滑化:株式譲渡により、事業をスムーズに次世代へ引き継ぐことができる。

〈デメリット〉

  • 設立費用・手間:登記費用として約20万円~25万円、手続きに数週間を要する。
  • 社会保険料の負担:経営者自身も加入義務があり、会社負担分の保険料が発生する。
  • 赤字でも納税義務:利益がなくても法人住民税均等割(年約7万円~)の支払いが必要。
  • 事務・会計処理の複雑化:会計帳簿の作成や税務申告が複雑になり、税理士への依頼コストが増加する。

まとめ:最適な選択はあなたの「事業の未来像」から

ここまで、「設立」と「開業」の違いから、「法人」と「個人事業主」をいろいろな面で比べて説明してきました。
結局のところ、どちらの事業形態が優れているという絶対的な答えはありません。
あなたにとって一番良い選択は、あなたの仕事の内容、今の所得の大きさ、そして何よりも「将来、どんなビジネスに育てていきたいか」というビジョンによって決まります。

あなたに向いているのはどっち?最終チェックリスト

個人事業主が向いているケース
  • 低リスクで事業を小さく始めたい。
  • 当面の所得が数百万円程度に収まる見込みがある。
  • 事務手続きをできるだけシンプルにしたい。
  • 個人客相手(BtoC)のビジネスが中心で、法人格の有無が取引に影響しにくい。
法人が向いているケース
  • 初年度から高い売上・利益が見込まれる。
  • 将来的に事業を大きく拡大し、従業員を雇用したい。
  • 銀行からの融資や投資家からの出資を受けたい。
  • 社会的信用が重視される企業間取引(BtoB)を展開する。
  • 事業のリスクから個人資産を切り離したい。
賢くビジネスを進めるには:成長に合わせて形を変えよう

覚えておいてほしいのは、このスタートの形は、一生変えられないわけではないということです。
最初は個人事業主としてスタートし、事業が軌道に乗ったタイミングで法人化すれば、最初のリスクを抑えながら成長を目指すことができます。
あなたのビジネスの成長段階に合わせて、最適な形を選び直していくことが、賢い経営判断と言えるでしょう。


最適な事業形態を選ぶことは、あなたのビジネスの礎を築く、とても大切な判断です。税金、社会保険など、専門的な知識が必要な場面も少なくありません。

「自分の事業は、本当に今、法人化した方がいいのかな?」
「設立手続きや費用について、具体的に誰かに相談したい」
もし、このようなお悩みや疑問をお持ちでしたら、ぜひ一度、私たちほまれ税理士法人にご相談ください。あなたの事業計画に寄り添い、最適なスタートを切れるようお手伝いします。

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この記事を書いた人

税理士/近畿税理士会所属/税理士登録年2005年/登録番号102807/会計システムの開発エンジニアとしてキャリアをスタート。その後、大阪市内の税理士法人での勤務を経て2005年に税理士として登録し、個人事務所を開業。法人化などを経て、現在はほまれ税理士法人の代表を務める。 「後世に誇れる仕事をする」を理念に、これまで2,000社以上の顧問先を支援。企業のライフステージに合わせた総合的なコンサルティングを提供している。

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