【はじめに】「もっと早く知りたかった…」その一言をなくすために
こんにちは!税理士の井上です。
会社設立は、あなたの夢を形にする人生の大切なスタートです。しかし、そのスタートラインには、知識がないと見えない「落とし穴」がたくさん潜んでいるのも事実です。
「手続きのミスでオープンが遅れてしまった」 「税金の特典を知らずに最初から損をしてスタートした」
こうした失敗の多くは、実は「事前に知ってさえいれば、防げたもの」もあります。
この記事では、数多くの会社設立をサポートしてきた私が、実際に見てきた「よくある失敗」を15個に厳選してご紹介します。
関連記事:【税理士が解説】会社設立の法的な流れと、失敗しないための重要ポイント |ほまれ税理士法人
会社設立における失敗例
設立「前」の計画段階でつまずく5つの失敗
会社設立は、登記申請書を出す前の計画段階もとても大切です。この時期のミスは、後から修正することが難しいこともあります。
ここでは、後々の事業に最も大きな影響を与え、起業家が見過ごしがちな失敗例をご紹介します。
失敗例1:事業目的の不備で許認可が下りない
会社の憲法ともいえる「定款」には、その会社が何を行うのかを示す「事業目的」を必ず記載します。
事業目的には、法律上、次の3つの必須要件が求められます。
1. 適法性:法律に反していないか
事業内容が法律や公序良俗に反していないことが絶対条件です。
違法薬物の販売は当然認められません。また、弁護士や税理士など、特定の資格がなければできない業務を目的とする場合は、有資格者である必要があります。
2. 営利性:利益を追求するものか
株式会社や合同会社は、利益を上げて出資者に分配することが目的の「営利法人」です。
そのため、ボランティア活動のような非営利活動を事業目的として記載することはできません。「社会貢献活動」などを目的とする場合は、必ず「商品の販売及び提供」といった収益を伴う事業と組み合わせて記載する必要があります。
3. 明確性:誰が見ても具体的にわかるか
記載内容は、第三者(役所や金融機関)が読んでも事業内容を具体的に理解できるように記載しておく必要があります。
専門的すぎる用語や社内でのみ通じる用語は避けてください。例えば、「イノベーション創出支援」といった抽象的な表現ではなく、「経営コンサルティング業務」「Webサービスの企画・開発及び提供」のように、具体的な活動内容を記載することが求められます。
この3つの要件を満たし、かつ将来の事業展開を見据えた事業目的を、定款に記載することが大切です。

許認可が必要な事業を始める方へ!「目的」の書き忘れは要注意です
会社設立の目的を決める際に、特に気を付けてほしいのが、許認可が必要なビジネスを始める場合です。
例えば、飲食店や建設業、不動産業(宅建業)、古物商、運送業といった事業は、役所から必ず許可や届出をもらう必要があります。
この許認可の申請をするとき、役所はあなたの定款をチェックして、「この事業をやるために必要な特定の言葉」がきちんと記載されているかを確認します。
もし、中古車販売をしたいのに目的欄に「自動車の販売」とだけ書いてあり、「古物営業法に基づく古物商」といった大切な言葉が抜けていると、残念ながら古物商の許可はもらえません。
許可が下りなければ、その事業を正式にスタートさせることはできず、計画が大きく遅れてしまうことになります。
「目的を書き直せばいい」と思うかもしれませんが、これは単なる遅れでは済みません。
もし、許可がもらえると思って事務所を契約したり、従業員を雇ったりした後で目的のミスがわかったら大変です。目的を変更するには、株主総会を開き、登記の変更手続きが必要で、これだけで費用がかかります。さらに、申請をやり直すことで事業開始が遅れてしまいます。
会社を設立する前に、あなたの事業に必要な言葉を定款に正しく記載しておくことが、安心でスムーズなスタートを切るための、大切な準備だと覚えておいてください。
会社設立の費用はいくら?株式会社・合同会社の全コスト比較と賢い節約術 |ほまれ税理士法人
失敗例2:共同創業者との「株式比率」で経営権を失う
情熱を共有する仲間との共同創業は本当に心強いものですよね。しかし、最初の「株式比率」の決め方を間違えると、後になって深刻な経営権争いや、最悪の場合会社が分裂してしまう原因になります。
この比率こそが、会社の意思決定を左右する最大の要因です。
経営権を握るための「議決権」のルール
株主総会の意思決定は、株主が株式数に応じて保有する議決権を行使して行うため、株式の保有割合はとても大切です。
まずは、重要な決議に必要な割合をしっかり理解しておきましょう。
| 決議の種類 | 必要な議決権の割合 | 影響する決定事項 |
| 普通決議 | 50%超(過半数) | 役員の選任・解任、役員報酬の決定など、日常の経営に関する事項。 |
| 特別決議 | 66.7%以上(3分の2以上) | 定款の変更、事業譲渡、会社の解散など、会社の根幹に関わる重要事項。 |
議決権を50%超持っていれば、単独で経営の主導権を握ることができます。また、66.7%以上を保有していれば、会社の将来を左右する重大な決定を行うことが可能です。
最大の落とし穴:安易な「50%ずつの平等」
共同創業者が最も陥りがちな失敗が、「公平にしよう」と安易に株式を50%ずつ分け合ってしまうケースです。
これは一見平等で聞こえは良いですが、経営方針で意見が対立した瞬間、どちらも過半数を取れないため、株主総会は完全にストップしてしまいます。重要な意思決定が何もできなくなり、会社は機能不全に陥ります。
これを「デッドロック(膠着状態)」と呼び、最悪の場合、会社を清算するしか道がなくなる非常に危険な状態です。
口約束は厳禁!貢献度を明確にする
また、単に出資したお金だけでなく、アイデア、技術力、人脈といった「創業への貢献(スウェット・エクイティ)」をどう評価し、株式比率に反映させるかも重要です。
創業時の口約束だけでは、事業が成長したときに「自分の貢献の方が大きい」といった問題に発展しかねません。
このような悲劇を避けるために、会社設立前には必ず「株主間契約書」を締結しましょう。株式の譲渡制限、デッドロックが起きたときの解決方法(どちらかが相手の株式を買い取るなど)、そして各創業者の役割などを、文書でハッキリと定めておくことが、賢明なリスク管理であり、創業の仲間を守ることにもつながります。
失敗例3:自己資金ゼロ・甘い資金計画で即資金ショート
「会社は資本金1円から作れる」という言葉を鵜呑みにして、十分な自己資金なしで起業するのは、おすすめできません。
なぜなら、会社を設立したその瞬間から、たとえ売上がゼロでも、家賃、人件費、社会保険料といった固定費は発生し続け、キャッシュフロー悪化に陥りやすくなります。また、資本金が少ない会社は、取引先や銀行等からの信用度が低くなる恐れがあります。
最大の罠:楽観的な予測が招く「黒字倒産」
多くの起業家が陥る罠は、売上予測は楽観的に、経費予測は甘く、少なく見積もってしまうことです。
事業計画書の上では利益が出ている(黒字)のに、売掛金の回収が遅れたり、予期せぬ出費が発生したりすると、手元の現金(キャッシュ)があっという間に枯渇します。これが、利益は出ているのに倒産する「黒字倒産」のメカニズムです。
資金ショートが引き起こす「負の連鎖」
資金がショートするのは、ただ「お金が足りない」だけでは終わりません。その影響は連鎖的に広がり、あなたの会社を追い詰めます。
- 信用失墜: 支払いが遅れることは、取引先からの信用を失うことにつながります。信用を失うと、ビジネスは成り立ちません。
- 機会損失: 資金不足で、必要な広告投資や優秀な人材の採用ができなくなり、成長のチャンスを逃します。
- 精神的消耗: 経営者が日々の資金繰りに追われることで、本来最も注力すべき事業戦略の策定や営業活動が疎かになってしまいます。
融資を受けるための「最低条件」を知る
日本政策金融公庫などの金融機関から融資を受ける際も、一定額の自己資金は審査において重要な評価項目の一つです。
自己資金が全くない状態では、「事業に対する本気度が低い」「リスク管理能力が欠けている」と判断され、融資のハードルは格段に上がります。
事業を安定した土台の上にスムーズに乗せるために、次の2つの準備を整えておくことをおすすめします。
- 少なくとも6ヶ月分の運転資金(固定費+生活費)を自己資金で用意すること。
- そして、現実的かつ保守的な資金計画を必ず設立前に策定すること。
失敗例4:マーケティング戦略の欠如で顧客がゼロ
「素晴らしい製品やサービスを開発すれば、お客さんは自然と集まってくるはずだ」
特に技術者出身の起業家などが陥りやすい、この「プロダクトアウト(製品優先)」という考え方です。
会社設立という法的手続きが完了しても、最初の顧客を獲得し、売上を上げるまで、あなたの会社は商業的には存在していないのと同じです。「誰に、何を、どう売るのか」を考えることはとても重要です。
準備不足が失敗に直結する4つの要因
- 市場調査の不足: ターゲットとなる顧客が本当に存在するのか?その顧客がどんな悩みを抱えているのか?を検証しないまま、思い込みだけで製品開発を進めてしまう。
- 競合分析の甘さ: 競合他社の強みや、彼らが提供している価値を理解せず、自社の優位性や差別化のポイントを明確にできない。
- 販売チャネルの未確立: 製品が完成しても、それを顧客にどう届けるかの具体的な販路(ウェブサイト、代理店、直接販売など)が確保できていない。
- プロモーション計画の欠如: 見込み客に自社の存在を知ってもらうための、広報・広告活動の計画や予算が全くない。
法務局への登記日よりも大切な日
会社設立の準備と並行して、見込み客リストの作成、ウェブサイトやSNSでの情報発信、そしてプレマーケティングを必ず進めてください。これにより、設立初日からロケットスタートを切れる体制が整います。
失敗例5:自己流の節約が招く失敗
会社設立には、定款作成や登記申請などの法律の手続き、資本金や役員報酬といった税金の戦略、そして社会保険の加入などの労務の手続きまで、幅広い専門知識が求められます。
これらの手続きを「自分でやって数万円節約しよう」と考える起業家の方は少なくありません。
しかし、この「小さな節約」が、将来的に数百万円、場合によってはそれ以上の損失を生む可能性があるのです。
専門家への費用は「保険料」だと考えてください
司法書士は登記のプロ、税理士は税金と会計のプロ、社会保険労務士は労務のプロです。
それぞれの専門家に支払う費用は、決してムダな出費ではありません。それは、あなたが失敗を未然に防ぎ、事業を法務・税務・労務のリスクからしっかりと守るための「保険料」です。
必要な投資だと考え、安心して専門家の力を借りてください。
関連記事:会社設立と税理士:スタートアップを成功に導く戦略的パートナー【完全ガイド】 |ほまれ税理士法人
失敗例6:資本金の額を「なんとなく」で決めてしまう
資本金の額は、あなたの会社の信用度を示す大切なサインの一つです。でも、それ以上に税金を決める上でとても重要な意味を持っていることをご存知でしょうか?
特に「1,000万円」と「1億円」という2つのラインは、税金の負担を大きく左右する「壁」として存在しています。
【重要】資本金1,000万円の壁
会社設立の際、資本金を1,000万円より少なく設定すると、あなたの会社は税金面で非常に有利な特典を主に2つ受け取れます。このちょっとした知識があるかどうかで、手元に残るお金が大きく変わってきます。
1. 消費税の納税が最大2年間免除になる!
- 内容:資本金が1,000万円未満で会社を設立すると、原則として設立から最長2年間、消費税の納税が免除されます。
- メリット:これは、お客様から預かった売上にかかる消費税を、そのまま会社の利益として残せるということです。創業期は何かとお金が出ていく時期ですから、このキャッシュフロー(手元の現金)への効果は大きいです。
2. 法人住民税(均等割)が大幅に安くなる!
- 均等割とは: 均等割という税金は、会社が赤字でも必ず支払わなければならない、いわば年会費のような税金です。
- 金額: この均等割の金額は、資本金の額に応じて変わります。例えば、東京都23区内だと、資本金が1,000万円以下なら年額7万円で済みますが、1,000万円を超えると年額18万円になります。毎年必ず払うお金が10万円以上も変わるのは大きいですよね。
【実践テクニック】自己資金を最大限に活かす方法
もし、自己資金が例えば1,100万円ある場合、その全額を資本金にするのはもったいないです。
そうではなく、990万円を資本金とし、残りの110万円を「役員からの借入金」として会社に入れることで、先に挙げた税金のメリットを最大限に活かすことができます。
【さらに重要】資本金1億円の壁
会社が成長した後も、資本金は1億円以下に抑えることが、税金対策の鉄則となります。
なぜなら、資本金が1億円以下の場合、その会社は税法上「中小法人」として扱われ、国から様々な手厚い優遇措置が適用されるからです。
1. 法人税の軽減税率が受けられる!
年間の所得金額のうち800万円までの部分について、通常23.2%の法人税率が15%に軽減されます。
2. 交際費を年間800万円まで経費にできる!
お取引先との飲食費などの交際費について、年間800万円まで全額、税務上の費用(損金)として計上できます。
3. 30万円未満の資産を一括で経費にできる!
パソコンや工具、事務機器など、30万円未満の資産を購入した場合、年間合計300万円まで一括で経費にできます。
4. 赤字になったら税金が戻ってくる!
もし今期に赤字が出てしまった場合、前期に納めた法人税の還付(返してもらうこと)を受けられる特例があります。経営が厳しい時期に、手元の現金を増やすための心強い制度です。
これらの優遇措置は、中小企業の成長を応援するために設けられたものです。資本金の額は、単なる会社の「見栄え」や「自己満足」で決めるのではなく、あなたの未来の税負担を決める重要な経営判断だと認識してください。
資本金額が税金に与える影響
| 項目 | 資本金990万円の場合 | 資本金1,010万円の場合 | 資本金1億100万円の場合 |
| 消費税の免除(設立2期) | 免除 | 免除 | 課税 |
| 法人住民税均等割(年額・東京23区) | 7万円 | 18万円 | 29万円 |
| 法人税率(所得800万円まで) | 15% | 15% | 15% |
| 交際費の損金算入枠 | 800万円 | 800万円 | 1億円 |
| 欠損金の繰戻し還付 | 可 | 不可 | 不可 |
失敗例7:決算月を「3月」にして消費税免除期間を無駄にする
個人事業主の事業年度が1月〜12月で決まっているのに対し、法人は決算月を自由に設定できます。
しかし、多くの起業家が、官公庁や大企業に合わせて「なんとなく3月決算」を選びがちです。実は、この「なんとなく」の選択が、大きな機会損失につながってしまうことがあるんです。
最大の落とし穴:「2年間」ではなく「2事業年度」
最大のポイントは、前にもお話しした「消費税の免税期間」です。この免除は「2年間」ではなく、「2事業年度(2期)」です。
つまり、第1期の事業年度が短ければ短いほど、免税期間の合計も短くなってしまうというルールがあるのです。
免税メリットを最大限に活かす鉄則
消費税の免税メリットを長く(最大24ヶ月)享受するための鉄則は、「設立月の前月を決算月にする」ことです。
| 失敗例と成功例の比較(設立日:2025年4月15日) |
| 失敗例(3月決算):第1期は4/15~翌年3/31の約11.5ヶ月。合計の免税期間は約23.5ヶ月。 |
| 最悪の失敗例(5月決算):第1期が4/15~5/31の約1.5ヶ月。合計の免税期間は約13.5ヶ月となり、10ヶ月以上も損をします。 |
| 成功させるなら:設立日を4月1日にすることで、第1期が丸々12ヶ月となり、免税期間を最大化できます。 |
このように、決算月の設定や設立日を工夫するだけで、手元に残るお金が大きく変わってきます。
決算月を決めるための2つの賢い視点
消費税の他にも、決算月を決める際には、次の視点も非常に重要です。
- 繁忙期を避ける: 決算業務は非常に忙しい作業です。自社の売上や業務の「繁忙期」を避けた月に設定することで、本業に集中できるようになります。
- 納税資金を確保しやすい時期を選ぶ: 決算から約2ヶ月後に法人税の納税が来ます。売掛金の入金が多く、手元の現金が潤沢にある月の2ヶ月後を納税月に選ぶと、資金繰りに困ることが少なくなります。
設立前に、最適な決算月を必ず検討しましょう。
失敗例8:登記申請の不備で設立日が大幅に遅延
あなたの会社にとって、設立日は法務局が登記申請書を受け付けた日となります。この日が、お客さまとの契約、許認可の申請、銀行口座の開設など、すべてのビジネス活動のスタート地点となる、非常に大切な日です。
しかし、提出する書類に不備があると、登記手続きは完了せず、設立日はどんどん後ろに延びていってしまいます。
「設立が遅れる」原因となる代表的な4つのミス
登記申請で、起業家の方がうっかりやってしまいがちな不備は以下の通りです。
- 定款の記載ミス: 会社の事業目的や、本店所在地(住所)などに誤字や記載漏れがある。
- 必要書類の不足: 役員の就任承諾書や、個人の印鑑証明書など、必須の書類が足りない。
- 会社実印の印影が不鮮明: 会社の実印を押す際に、かすれたり、二重になったりして、はっきり読めない。
- 登録免許税のミス: 収入印紙を貼り忘れたり、金額を間違えて貼ってしまう。
遅延が招く「ビジネスチャンスの損失」
申請書類に不備が見つかると、法務局から連絡が入ります。申請した人は、法務局に出向いたり郵送したりして訂正を行わなければならず、その間、審査は完全にストップしてしまいます。
不備がなければ通常1週間〜10日程度で登記は完了しますが、補正が重なると1ヶ月以上かかってしまうことも珍しくありません。
この遅延は、単なるスケジュールの遅れでは済みません。
- 契約ができない: 大切な顧客との契約締結日が決まっていたり、オフィスの賃貸借契約が迫っていたりする場合、会社の法人格が存在しないため、契約行為が一切できません。
- 信用問題: これにより、ビジネスチャンスを失うだけでなく、「まだ会社がないのか」と信用問題に発展する可能性があります。
登記手続きは、司法書士という専門家に依頼することで、こうした設立の遅延リスクを確実に回避できます。専門家に任せて、安心して本業に集中できるようにしましょう。
関連記事:【税理士が徹底解説】会社設立の必要書類ガイド|登記から税務手続きまで |ほまれ税理士法人
失敗例9:「青色申告承認申請書」を出し忘れ、初年度から赤字繰越ができない
会社を設立したら、法務局での登記だけでなく、税務署や都道府県、市町村にもさまざまな届出書を提出する義務があります。
これらの届出には提出期限があり、特に重要なのが、税務署へ出す「青色申告の承認申請書」です。
期限を1日でも過ぎると特典はゼロ
この申請書の提出期限は、「設立の日以後3ヶ月を経過した日」と「設立第1期の事業年度終了の日」のどちらか早い日の前日までと、定められています。
この期限を1日でも過ぎてしまうと、その事業年度は青色申告の特典を一切受けることができず、自動的に「白色申告」となってしまいます。
青色申告は、「欠損金(赤字)を10年間繰り越して、将来の黒字と相殺できる」メリットがあります。
「青色申告の承認申請書」の提出忘れは、経営上取り返しのつかない過ちとなってしまいます。
忘れてはいけない!設立後に必須のその他の届出
青色申告の他にも、重要な届出がいくつかあります。
- 法人設立届出書: 会社を設立してから2ヶ月以内に、税務署、都道府県税事務所、市町村役場へ出します。
- 給与支払事務所等の開設届出書: 役員お一人の会社でも役員報酬を支払う場合は、事務所を開設してから1ヶ月以内に税務署へ提出する義務があります。
これらの届出は、期限が絡むものがほとんどです。顧問税理士と契約し、これらの手続きを漏れなく代行してもらうことが、最も確実です。
失敗例10:契約書・名義変更の見落としで法務トラブルに
個人事業主から会社(法人)を設立する際に、特に注意が必要なのが、資産や契約の「名義変更」です。
法律の世界では、個人であるあなたと、新しく設立された会社は、全くの別人格として扱われます。個人事業主時代に使っていた資産や契約が、自動的に法人に引き継がれることはありません。
名義変更を怠ったときに起こる深刻なトラブル
この大切な名義変更を怠ると、トラブルが起こる可能性があります。
- 許認可の失効: 個人名義で頑張って取得した事業の許認可は、法人には引き継がれません。法人として新たに許認可を取り直す必要があります。
- 契約の無効リスク: 事務所の賃貸借契約や、顧客との大切な業務委託契約などを法人名義に変更しないままだと、何か契約上のトラブルが起こった際に、法的な保護を受けられないリスクを抱えることになります。
- 資産の帰属問題: 事業で使っている車両や高額な備品、ウェブサイトのドメイン、特許権などの大切な資産が個人名義のままだと、それらは会社の資産として認められません。銀行融資の際の担保にできなかったり、将来、会社を売却する際に問題点として指摘される可能性があります。
地道な作業ですが、会社を守る「土台」です
これらの名義変更は、関係各所との手続きが必要なため、確かに手間がかかる地道な作業です。
しかし、この作業を怠ることは、法的に不安定な土台の上で事業を行うことに他ならず、将来の大きな法務リスクを自ら抱え込むことになります。
面倒に感じても、一つひとつ確実に名義変更を行うことが、あなたの会社を強く、安全にしていくために、絶対に欠かせない準備だと覚えておいてください。
設立「後」の運営で破綻する5つの落とし穴
無事に会社を設立できても、これで安心するのは早すぎます。本当の挑戦はここからがスタートです。
設立後の運営段階で待ち受ける、経理(お金の管理)、労務(従業員の管理)、そして経営者自身の問題が、あなたの会社の存続を脅かすことがあります。
ここでは、設立後に多くの会社が陥りがちな5つの落とし穴について、しっかり解説していきます。
失敗例11:役員報酬の決め方が悪く、社会保険料と税金で圧迫
会社から社長個人に支払われるお金を「役員報酬」と呼びます。この金額は、会社の利益とあなたの手取り額、そして税金・社会保険料のバランスを考えて決めるべき、非常に重要な経営判断です。
最大のルール:原則「1年間変えられない」
役員報酬は原則として事業年度の開始から3ヶ月以内に決めたら、その事業年度中は毎月同じ金額を支払い続けなければなりません。(定期同額給与)
- 落とし穴: 「業績が良いから期中に増やそう」「資金繰りが苦しいから期中に減らそう」と考え、途中で金額を変えてしまう。
- 結果: 損金として認められない分、会社の利益が増えたことになり、法人税の負担が重くなります。
見落としがちな「社会保険料」の重さ
役員報酬の金額を決める際、税金だけでなく、社会保険料の負担も考えておく必要があります。
- 報酬を高くすると、法人税は減りますが、個人の所得税と社会保険料が大きく増えます。
- 報酬を低くすると、社会保険料の負担は減りますが、会社に利益が残り、法人税の負担が増えます。
- 社会保険料: 特に注意すべきは、社会保険料の重さです。役員報酬の約30%が社会保険料となり、これを会社と個人で半分ずつ負担します。つまり、会社は役員報酬とは別に、その約15%を追加で負担する必要があります。
利益計画の甘さが会社を倒産の危機に
利益計画が甘いまま高い役員報酬を設定してしまうと、売上が計画通りに伸びなかった場合でも、毎月固定で高額な役員報酬と社会保険料を支払い続けなければなりません。
役員報酬は、会社の利益計画と資金繰りを慎重にシミュレーションした上で、専門家である税理士と相談して決定することをおすすめします。
失敗例12:経理・労務の事務負担を甘く見て本業が疎かになる
個人事業主時代とは比べ物にならないほど、会社(法人)の経理や労務の手続きは複雑で多岐にわたります。
この事務作業の負担を甘く見て、経営者が本業の傍らで片手間に処理しようとすると、必ずどこかで無理が生じ、会社の成長を妨げる原因になってしまいます。
経営者の時間は「会社の最も貴重な資源」
- 経理業務の重さ: 複式簿記による日々の記帳、請求書や領収書の整理、月次の試算表作成、そして最終的な決算書の作成と法人税申告。
- 労務業務の煩雑さ: 従業員を一人でも雇えば、労働契約、社会保険・労働保険の加入手続き、毎月の給与計算と源泉徴収、そして年末調整まで発生します。
自己流はちょっと危険!後から余計な罰金を払うことになりかねません
経理や労務の知識が不十分なまま自己流で処理した結果、申告漏れや計算ミスが発生し、後から税務調査で追徴課税や延滞税を課されるというリスクもあります。
大切なコア業務に集中できる体制を整えましょう
今は、安くて高性能なクラウドソフトや、私たちのような専門家の力を上手に借りられる時代です。
記帳代行や給与計算といった管理業務は、思い切ってプロに任せてしまいましょう。
経営者であるあなたの一番大切な役割は、営業、マーケティング、そして新しいアイデアを生み出すこと、つまり会社のコア業務に集中することです。
失敗例13:社長一人の会社でも社会保険の加入義務を知らない
「従業員はいないし、社長一人の会社だから、社会保険に入らなくてもいいだろう」
これは誤解です。
法人なら社長一人でも社会保険の加入は「義務」
健康保険・厚生年金保険からなる社会保険は、法人であれば、たとえ社長一人だけの会社であっても、法律上の強制適用事業所となります。
役員報酬を少しでも受け取っている限り、社会保険への加入は法律上の義務です。個人事業主時代に加入していた国民健康保険・国民年金からは、必ず切り替えなければなりません。
放置すると起こる「致命的な請求」
もし、社会保険に未加入のまま放置していると、年金事務所による調査や、将来採用した従業員からの通報などによって発覚する可能性があります。
その場合、最も恐ろしいのは、最大で過去2年分に遡って、会社負担分と個人負担分の社会保険料を一括で請求されることです。これは数百万円にのぼることもあり、致命的な金額になりかねません。
信用にも関わる問題
社会保険に未加入であることは、資金調達のための融資審査を受ける際や、コンプライアンス(法令遵守)を重視する大手企業との取引においても、マイナス評価となる可能性があります。
正しい知識を持ち、会社設立後速やかに(原則5日以内)社会保険の加入手続きを行うことが、大切です。安心して事業を進めるためにも、手続きは忘れないようにしてください。
失敗例14:孤独とプレッシャーで経営者が燃え尽きる
会社の失敗は、お金や戦略といったビジネス上の問題だけで起こるわけではありません。実は、経営者自身の心と体の健康も大切です。
起業家が抱える「孤独」という名の重圧
起業家は、事業の責任を背負うことになります。
- 資金繰りの不安や、売上が上がらない焦り。
- 従業員を路頭に迷わせられないという強い責任感。
- そして、誰にも本音を相談できない孤独感。
これらの絶え間ないプレッシャーは、経営者の精神を少しずつむしばんでいきます。
睡眠時間を削って働き続けた結果、心身が限界を迎え、正常な経営判断ができなくなる「燃え尽き症候群(バーンアウト)」に陥るケースは少なくありません。経営者であるあなたが倒れてしまえば、会社も共に倒れてしまいます。
自分をケアする仕組みを作りましょう
この失敗を避けるためには、意識的に自分をケアする仕組みを、経営戦略の一環として作ることが非常に重要です。
- 相談相手を持つ: 同じ境遇の起業家仲間や、客観的な意見をくれるメンター、そして守秘義務のある専門家(私たち税理士など)に、定期的に状況を話しましょう。一人で抱え込まないことが大切です。
- 休息を義務化する: 意識的に仕事から完全に離れる時間をスケジュールに組み込み、心身をリフレッシュさせてください。休むことも大切な仕事です。
- 権限を委譲する: 信頼できる従業員や外部パートナーに少しずつ業務を任せ、自分がいなくても会社が回る仕組みを構築しましょう。
経営者の健康は、会社の最も重要な資産です。あなたの健康を守ることが、会社を長く存続させるための最強の戦略だということを忘れないでください。
失敗例15:「引き際」を決めずにスタートし、深追いしてしまう
「もしダメだった時」のことを考えるのは、気分の良いものではありません。しかし、それを決めておかないと、いざという時に冷静な判断ができなくなります。
「あと少し頑張れば、なんとかなるかもしれない…」
多くの経営者が、この「期待」と「執着」によって判断を誤ります。その結果、赤字を個人の借金で穴埋めするまで追い込まれてしまうケースは、後を絶ちません。
冷静なうちに「ここまで来たら撤退する」というルールを作っておくこと。
「引き際」を見極めて、冷静に決断を下すことも、立派な経営戦略であり、経営者として非常に大切なことなのです。
冷静な「損切り」こそ勇気
感情に流されることなく、冷静に「ここで引く」という勇気を持つことが、あなたの次の新しい挑戦への道を必ず開きます。
事業を始める前に、「もし、ここまでうまくいかなかったら撤退する」という客観的な数値に基づいた判断基準を、あらかじめ決めておきましょう。
この冷静なルールが、「これ以上は深追いしない」という賢明な判断を助け、あなたとあなたの財産を守ることにつながるのです。
終わり方を知っておくのも経営者の責務
また、事業を清算するには、解散登記や清算手続きといった法的な手順をしっかりと踏む必要があります。
もし事業を放置したままにしておくと、たとえ休業状態でも法人住民税の均等割は課税され続け、役員変更登記を怠れば過料の対象となる可能性もあります。
「どう終わるか」を知っておくことも、経営者の大切な責務なのです。
まとめ:会社設立の失敗は「知っていれば」防げます
これまで見てきたように、会社設立における失敗の多くは、不運や予測不可能な事態によって引き起こされるものではありません。
そのほとんどが、事前に「知っていれば」防げたはずの知識不足や準備不足に起因するものなのです。
会社設立は、あなたの人生における大きな決断です。その大切な最初の一歩を後悔なく踏み出すため、そして事業の成功の可能性を最大限に高めるために、ぜひ私たちほまれ税理士法人の持つ専門的な知識を頼ってください。
あなたの会社が安心してスタートを切れるよう、専門家として全力でサポートさせていただきます。

