会社の資本金を減らすには?「減資」の目的・手続き・税務リスクを解説 

【はじめに】なぜ、会社を「小さく」するのか?

こんにちは!税理士の井上です。

会社の「資本金」と聞くと、多くの経営者は「大きければ大きいほど良い」と考えます。会社の体力や信用の証ですから、それは当然のことですよね。

しかし経営の世界には、その資本金をあえて「減らす(=減資)」という、一見すると真逆の戦略が存在することをご存知でしたか?

それは、会社が「縮小」するためではありません。むしろ未来の成長のために、会社をより身軽で、強くするための非常に高度な経営判断なのです。

「減資」は、少し難しいテーマかもしれません。だからこそこの記事ではその目的やメリット、そして注意すべき点を専門家として分かりやすく解説します。

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資本金は、会社の財産や信用を示す、大切な数字です。

しかし、会社の状況によっては、その数字を意図的に減らす「減資」という手続きが、会社の未来を切り拓く、強力な一手になることもあります。

ただし、減資には、法律で定められた厳格な手続きや、税金面での複雑なルールも伴います。この記事を最後まで読めば、その本質と安全に進めるための手順を理解しているはずです。

目次

そもそも「減資」とは?

「減資(げんし)」とは、その名の通り、会社の「資本金」という帳簿上の数字を、意図的に減らす手続きのことです。

ただし、これは社長の気分で自由に変更できるものではなく、株主総会での決議や債権者を保護するための手続きなど、法律(会社法)で定められた厳格なルールに従って行う必要があります。

 減資の主な目的は、次の3つ

なぜ、あえて会社の資本金を減らすのでしょうか?その主な目的は、次の3つです。

  1. 過去の赤字を、帳簿上なくすため(欠損金の補填)
  2. 税金を安くするため(節税)
  3. 株主へ、出資したお金を払い戻すため

関連記事:増資の全体像:目的、メリット・デメリット、種類を専門家が徹底解説  |ほまれ税理士法人

「有償減資」と「無償減資」の、決定的な違い

減資には、その時、実際に会社のお金が動くかどうかで、大きく2つのタイプに分かれます。

 有償減資 = 会社のお金が「減る」減資

減資の手続きとセットで、株主に対して、実際にお金を払い戻すのが「有償減資」です。

会社の財産が、文字通り株主へ流出するため、会社の規模を小さくしたい場合や、株主への利益還元として行われます。

 無償減資 = 会社のお金は「減らない」減資

一方で、株主へのお金の払い戻しは一切行わず、帳簿上の数字だけを操作するのが「無償減資」です。

会社の金庫にあるお金は1円も動かないため、資金繰りに影響を与えることなく、「過去の赤字を消す(財務改善)」や「税金を安くする(節税)」といった目的を達成できるのが、最大の特徴です。

有償減資と無償減資の比較表

項目有償減資無償減資
目的株主への財産払い戻し欠損金の補填、節税
資金の流出ありなし
簿価純資産への影響減少する影響なし
会計上の処理資本金減少後、剰余金から株主へ払戻資本金減少後、剰余金に振り替えて欠損金に充当
税務上の主な影響株主に「みなし配当」課税が発生する場合がある従業員数の判定、法人税上の優遇適用がある場合がある
主なメリット株主関係の維持・強化財務体質の改善、税負担の軽減

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減資で得られる、3つの大きなメリット

減資は会社の状況によっては、有効的な経営改善の手段になります。特に、税金と財務の面で、大きなメリットが期待できます。

メリット①:税金が安くなる(節税)

減資の最も分かりやすいメリットは、税金の負担が軽くなることです。

会社の税金は、資本金が「1億円」を超えるかどうかで、その扱いが大きく変わります。資本金を1億円以下に減らすことで、大企業ではなく「中小企業」として扱われるようになり、以下のような税制上の特典(優遇措置)を受けられるのです。

  • 法人税の税率が軽減される(利益800万円以下の部分)
  • 上限800万円まで交際費が認められる
  • 赤字でも必ず払う「法人住民税均等割」が、安くなる可能性がある
  • 「外形標準課税」という、赤字でもかかる税金の対象外になる(一部を除く)

メリット②:会社の「決算書」が綺麗に見える

長年の赤字が溜まっていくと、会社の決算書(貸借対照表)は、非常に見栄えの悪いものになります。

これでは、銀行から融資を受ける際に「この会社は、体力がなくて危険だ」と判断され、審査で不利になってしまいます。

そこで、減資(無償減資)によって帳簿上の資本金を取り崩し、そのお金を使って過去の赤字を帳簿上、相殺するのです。

会社の金庫にあるお金は1円も動きませんが、決算書の見栄えが良くなることで、銀行や取引先からの信用を取り戻すきっかけになります。

減資に伴う、2つのデメリット

減資にはメリットだけでなく、もちろんデメリットとリスクもあります。良い面と悪い面の両方を、冷静に比較することが重要です。

デメリット①:会社の「信用」が、低下する可能性がある

一般的に資本金の額は、会社の「体力」や「規模」を示す分かりやすい指標として見られています。

そのため、減資で資本金が少なくなると、たとえ会社の中身(財産)は変わらなくても、取引先や銀行から「この会社、体力がなくなったのでは?」と見なされ、会社の信用が下がってしまう恐れがあります。

その結果新しい取引がしにくくなったり、銀行からの融資が厳しくなったりする、といった具体的なリスクも考えられます。

デメリット②:手続きに時間とお金がかかる

減資の手続きは、非常に複雑で時間も費用もかかります。

  • 金銭的なコスト 

国に払う税金(登録免許税)として3万円~かかる他、司法書士など専門家への依頼費用として、数十万円が必要になることもあります。

  • 時間的なコスト 

株主総会の準備から債権者への通知、法務局への登記書類の準備など非常に多くの手間と時間がかかります。

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【全3ステップ】減資の手続きと、スケジュール

減資の手続きは法律で厳格に定められており、だいたい2ヶ月くらいかかります。

特に「債権者保護手続き」には1ヶ月以上かかるため、余裕を持った計画が必要です。

Step 1:まず「株主総会」で決める

減資は会社の根幹に関わる重要な決定です。そのため、まずは株主の賛成を得る必要があります。

原則として過半数の株主が出席し、議決権の3分の2以上の賛成(これを「特別決議」と言います)が必要です。

Step 2:「債権者」に減資することを知らせる

減資によって会社の財産が減ると、お金を貸している銀行や取引先といった「債権者」が、将来お金を回収できなくなるリスクがあるため、債権者に事前に説明が必要です。

そのため法律では、「これから減資をしますが、もし異議がある方は言ってください」と、事前に知らせる義務が定められています。(これを「債権者保護手続き」と言います)

Step 3:法務局へ「資本金が減りました」と登記申請する

債権者への告知期間が終わったら、株主総会で決めた日に減資の効力が発生します。

その日から2週間以内に法務局へ「資本金の額の変更登記」を申請しなければなりません。もし、この期限を過ぎてしまうと、ペナルティ(100万円以下の過料)が課される可能性があるので、注意が必要です。

【ケース別】減資の会計と税金のルール

減資の会計・税務のルールは、その目的(お金が動くか、動かないか)によって異なります。

1. 会社のお金が動かない「無償減資」の場合

これは、株主へのお金の払い戻しはせず、帳簿上の数字だけを操作する減資です。

  • 会計のルール 

会社の金庫にあるお金は1円も動きません。帳簿上でマイナスになっていた「過去の赤字」を、資本金のエネルギーを使ってプラスマイナスゼロにする、というイメージです。

  • 税金のルール

 実際のお金は動いていないので、原則として、法人税の計算には影響しません。ただし、一定の条件を満たせば、赤字でもかかる税金(法人住民税均等割)が安くなる可能性があります。

関連記事:財務会計と管理会計の違いとは?税理士が法律と実務の両面から解説  |ほまれ税理士法人

2. 会社のお金が動く「有償減資」の場合

こちらは減資の手続きとセットで実際に株主へお金を払い戻すため、税金のルールが非常に複雑になります。

株主への払い戻しは「みなし配当」として課税される

会社から株主へ払い戻されたお金は、税務上「株主への利益の還元(=ボーナス)」と見なされる部分が出てくることがあります。これを「みなし配当」と呼びます。

この「みなし配当」と判断された部分には、所得税や住民税がかかってきます。(株主が個人の場合、最大で55%もの高い税率になることも)

なぜこんな複雑なルールがあるのでしょうか?

それはもしこのルールがないと、会社が利益を「給料」や「配当」としてではなく、「減資による払い戻し」という形で株主に渡すことで税金を不当に安くできてしまうからです。

このように、特に株主へお金を返す「有償減資」は、株主個人の税金にも大きな影響を与えます。実行する前には、必ず税理士などの専門家と、入念なシミュレーションを行いましょう。

有償減資におけるみなし配当の計算例

項目計算式例(単位:円)
減資前の簿価純資産額200,000
減資前の資本金等の額100,000
株主への払い戻し額10,000
資本の払い戻しとみなされる額減資前の資本金等の額 ÷ 減資前の簿価純資産額 × 払い戻し額100,000 ÷ 200,000 × 10,000 = 5,000
みなし配当額払い戻し額 – 資本の払い戻しとみなされる額10,000 – 5,000 = 5,000

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「資本金の減資」と「資本準備金の取崩し」はどう違う?

会社の資本(体力)を示すお金には「資本金」の他に「資本準備金」というものがあります。

過去の赤字を消したい時など、この「資本準備金」を取り崩す(減らす)という選択肢もあり、これは減資よりも簡単な手続きで済むという大きなメリットがあります。

 なぜ、資本準備金の取崩しの方が「簡単」なのか?

会社にとって最も大切な「資本金」を減らす減資と違い、資本準備金の取崩しには、次のような違いがあります。

  • 株主総会の決議が、より緩やか(特別決議ではなく、普通決議でOK)
  • 国(法務局)への変更登記や、登録免許税(3万円)が不要

このように、手続きの手間とコストの面で資本準備金の取崩しの方が圧倒的にハードルが低いのです。

【使い分け】まず「準備金」から。足りなければ「資本金」

ですから、経営判断の順番としては、

  1. まず、より簡単な「資本準備金の取崩し」で対応できないか検討する。
  2. それでも足りない場合に、初めて「資本金の減資」を考える。

という流れが、会社への負担が少ない選択と言えるでしょう。

項目資本金減資資本準備金減額
目的会社の損失を補う、税金を減らす、株主にお金を返す会社の損失を補う、資本金を増やす
手続きの難しさ複雑(株主の特別な合意、債権者保護の手続きなどが必要)比較的簡単(株主の通常の合意でOK)
株主総会での決定原則として、特別な多数の賛成が必要原則として、通常の多数の賛成でOK
登記が必要か必要(変更登記)不要
登録免許税30,000円かかるかからない
会社の信用力への影響下がる可能性がある影響しない

減資を考えるなら、まず税理士に相談を

これまで解説してきた通り、減資は税金や法律のルールが非常に複雑に絡み合う、とても高度な経営判断です。

特に、税金を安くするための減資(無償減資)や、株主へお金を返すための減資(有償減資)は、一つ手順を間違えるだけで思ったような効果が得られないばかりか、予期せぬ多額の税金が発生するリスクもあります。

あなたの会社にとっての「最善の選択」を、専門家と共に

減資のメリットを最大限に引き出し、同時に、隠れたリスクを避けるためには、専門家である税理士とのシミュレーションが欠かせません。

私たちほまれ税理士法人は、あなたの会社の状況をじっくり伺い「本当に減資がベストな選択肢なのか?」「もっと良い方法があるのか?」その答えを、あなたの会社のパートナーとして一緒に見つけ出します。

初回のご相談は無料です。一人で悩まず、まずはお気軽にお声がけください。

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この記事を書いた人

税理士/近畿税理士会所属/税理士登録年2005年/登録番号102807/会計システムの開発エンジニアとしてキャリアをスタート。その後、大阪市内の税理士法人での勤務を経て2005年に税理士として登録し、個人事務所を開業。法人化などを経て、現在はほまれ税理士法人の代表を務める。 「後世に誇れる仕事をする」を理念に、これまで2,000社以上の顧問先を支援。企業のライフステージに合わせた総合的なコンサルティングを提供している。

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